「おまえの自由だ」と上司に言われ育休取得後、担当がなくなった

――そんな大変な思いをして取られた育児休暇でしたが、会社の反応はどうでしたか?

戸山当時は調達部門で、社内の各部署や外部とつなぐことがメインだったので、休みを取ることで周囲に迷惑をかけなかったと言ったら嘘になります。それでも、子どもが生まれる7月から1カ月ほどとりたいということは4月には上司や人事には伝えていました。その事業所には社員が4000人ほどいましたが、過去男性育休取得者は知っている範囲で1人のみ。僕の例は本当に異例。育児休暇取得は権利ですから、上司はNOとは言えないので「おまえの自由だからな」とは言いつつも、「男性で育休を取ったら評価は低くなるぞ」というようなことを言われました

 育児休暇の前から、周囲への連絡や仕事の準備や共有などをしてきたものの、気づくと僕の担当が少しずつ減っていました。

――育休中の担当交代ということですか?

戸山 いえ、担当を外された、ということですね。会社にいるうちから仕事を干されていったんです。

 それ以前から当時の上司とは相性が合わない部分があったので、それも影響していたのかもしれません。だから、育休だけで干されたとは断定できないのですが、休暇を終えて戻ってみたら、もう完全に自分の仕事はありませんでした

―― それはつらかったですね。そのときはどうされたんですか?

戸山 それでも自分から仕事を見つけたり、作り出したりして動くようにしました。新製品の部品代をかなりの低コストで決めてきたりもしたんです。それでも評価は全く上がりませんでした。

 育休復帰から半年したところで、希望もしていなかったのですが隣の部署に異動になりました。そこでもなんとか自分で工夫をしたりして頑張ったのですが、何をしても評価が低く、もうこれはどんなに努力をしても上がることはないと痛感し、1年後に退職を決めました。

 決め手は、僕がお迎え当番の日だったのに、会社のくだらない事情で帰れずに予想外にお迎えが遅れたことでした。保育園に着いたのが19時半くらいになり、子どもに必死で謝りました。そのとき、「これは自分の望んでいる人生ではない」と強く感じたんです。そこから仕事にモチベーションがなくなり、上司への尊敬も失いました。

 退職直前は、会社にバレないように必死で就職活動をし、1カ月で次の仕事を見つけたんです。誰もが入社から定年までいるような会社だったので、辞めること自体が“逃げ”のように上からは見られていましたね。退職のときに、すべての有休を消化しましたが、それさえ「あんな辞め方は許さない」と裏で上司が言っていたとか。それでも僕にも生活がありますから、有休は使いました。