2030年には日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替される、というレポートが発表されたのは2015年のこと。2030年といえば、今からたった12年後。DUAL世代の子どもたちが、まさにこれから社会に出ようとするころです。

 ただ、AI、機械学習、STEM、といったワードは耳にするものの、具体的に何が必要なのか、どんな時代になるのか、いまひとつイメージしきれていない親も多いのではないでしょうか? そこで、日経DUALでは、これからの時代を生きるうえで有利と言われている「理系脳」について、考えてみたいと思います。

 第一回目は、元マイクロソフト社日本法人社長として多くの理系脳と接し、近著『理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件』の中でも、「これからの時代は理系脳しか生き残れない」と断言する、著述家の成毛眞さんにお話を伺いました。なぜいま理系脳が必要なのか、どのような時代がやってくるのかについて、じっくりお聞きしていきます。

【理系脳を育てる遊び方・学び方 特集】
第1回 これからの時代は「理系脳」でないと生き残れない ←今回はココ!
第2回 理系脳を育む 最新のテクノロジー体験と空間遊び
第3回 幼児期 理系思考は手指を動かすことで育つ
第4回 6歳までは数字に多く触れて でもドリルは必要なし
第5回 小学生 算数で理系脳を鍛えれば、国語も付いてくる

理系は先天的な能力も大きく影響しているが…

 これからの時代は、理系脳が断然有利。そう聞いたら、わが子も理系に育てなければと思う親も多いはず。どのように育てれば理系になるのかと、率直に成毛さんに伺うと、開口一番「先天的な能力ですね。環境じゃない。だから、両親とも文系の親からは理系の子は生まれないですよ」とバッサリ。小学生の子どもを持つDUAL担当編集と筆者(ともに文学部出身)は、初っ端から固まるしかありませんでした。

成毛眞さん「21世紀に入って、文系と理系の力関係は完全に逆転した」
成毛眞さん「21世紀に入って、文系と理系の力関係は完全に逆転した」

 「20世紀までは、理系の人間はそこそこの食い扶持はあったけど、大金持ちにはならなかった。例えば大会社や官庁で出世したのは文系の人間で、理系の人間はエンジニア止まりのことが多かった。それが21世紀に入って、完全に逆転した。文系脳の人が社長や大臣をやっていては、この先ダメでしょうね」

 確かに世界的に見ても、理系出身者がトップにいる企業が目立ちます。いわゆるIT系以外の企業に勤める場合や、エンジニアやプログラマー、化学関係など理系の職業に就かない場合でも、理系脳でなくてはダメということでしょうか?

 「例えば、飲食店にしても、個人で1店舗やるだけならまだしも、チェーン化した時点で理系脳じゃないと経営は難しいでしょう。組織になった瞬間に、統計や確率を理解できる理系脳が必要になってくる。料理人だって一流の人は理系脳を持っている。昔ながらのレシピで仕事をしている料理人なんてもういない。何℃でどのタンパク質が分解されて、どの酵素がどうなるかと理解して作っている人が増えてきている。ラーメン屋だって、まるで化学実験みたいに研究してるでしょう?」

<次のページからの内容>
● 理系脳=理系科目が得意、ということだけではない
● 今後なくなっていく職業と、増えていく仕事
● 最新のSTEMに触れさせることが何よりも重要
● 公教育が不十分なら、親が意識的にテクノロジーに触れさせる機会を
● ドローンがなぜ飛ぶか、説明すれば小学生でも分かる