2018年11月、東京都が男性の家事・育児参画を応援するウェブサイト「パパズ・スタイル」を開設しました。厚生労働省が「イクメンプロジェクト」を立ち上げ、家事・育児に積極的な「イクメン」が注目されたのが2010年のこと。それから9年の間に、パパたちを取り巻く状況も大きく変わってきました。必死でこなすうちに、いつの間にかやりがいを見出したパパもいるでしょう。一方で、日々の仕事に追われてなかなかできていないパパもいるかもしれません。

変化する状況の中で、現在パパたちにはどんな課題があって、どうすることが家族の幸せに繋がるのでしょうか。そのために必要なことを、有識者の方々にうかがいました。

変わりゆく家族のかたち、理想のパパ像

男性の家事・育児参画に関する情報を発信し、男性の「家事」「育児」をみんなで応援する東京都のウェブサイト「パパズ・スタイル」。近年高まりつつあるパパの家事・育児への意識をさらに高め、これまで関心がなかったパパにも第一歩を踏み出してもらおうとするプロジェクトです。これまでにはデータを用いた男性の家事・育児の調査結果や、読んだその日から実践できる家事・育児のエピソード集が公開されています。

羽生祥子・日経DUAL創刊編集長
羽生祥子・日経DUAL創刊編集長

この数年間でパパたちを取り巻く状況は大きく変わってきました。2013年11月に日経DUALを創刊し、編集長の立場で首都圏を中心とした共働き夫婦の情報を発信してきた羽生祥子・日経DUAL創刊編集長は、当時を振り返って「たった5年前なのに、ずっと昔のよう」と話します。

「抵抗感なく育児を楽しいと話す男性が増えましたし、男性の育休、産休もよく聞くようになりました。最近は『パパが子どもと一緒に料理を作って待っているところに、ママが帰ってくる』といった家電広告も見かけます。日経DUALを立ち上げた当初は『ワーキングマザーなんて少数派に向けたメディアはやっていけるのか?』と言われていましたから、大手企業のCMでそんな家族の姿が描かれるのは、隔世の感があります」

パパが家事・育児を楽しめるようになれば、ママの働き方も多様化していきます。そんな新たな家族のかたちが描かれる中で、パパたちも新しい姿を模索しています。その一つが、パパコミュニティー「一般社団法人Papa to Children(PtoC)」です。

PtoCは2017年1月に任意団体として創設され、2018年8月8日の「パパの日」に一般社団法人化した、「全国にかっこいいパパを増やす」ことをビジョンに掲げた団体。2カ月に一度のペースで開催している「パパ未来会議」にはパパたちが子連れで集まり、夫婦や子育てに関する情報交換を行っています。

代表理事の川元浩嗣さんは「任意団体から数えて通算2年間の活動を通して、かっこいいパパ像が大きく変化した」と話します。

「創設当初は『仕事を楽しんでいて、子どもたちには背中で語る』のがかっこいい姿だと思っていました。今はそれだけではなく『かっこ悪い部分をさらけ出せるのが逆説的に大事なのではないか』と思います。

僕も最初は子どものオムツを替えただけで満足して、そのあとは膝の上に乗せた授乳クッションに肘を置きながらマンガを読んでいたことがありました。後から聞くと妻は殺意を覚えていたそうです(笑)。

でも、パパが変わっていくためにはそういう駄目なところを認めて、かっこ悪さをさらけ出すことが大切。男性はかっこつけたがりな側面があると思いますが、山を一歩一歩登る感覚で自分の駄目なところに向き合っていくと、家庭にも良い影響を与えると思います」(川元さん)

Papa to Children代表理事の川元浩嗣さん
Papa to Children代表理事の川元浩嗣さん