子どもの教育やしつけ、変化する夫婦関係、仕事と家庭のバランス──。子どもの成長とともに、共働きのDUAL世代にはさまざまな難問が立ちはだかります。そんな迷えるデュアラーに「失敗したっていいじゃない。間違ったらやり直せばいいんだから」と温かいエールを送るのは、幼児教育を通して数多くの家庭をコンサルティングしてきたチャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美さん。連載では、家族がチームとして協力し、自分たちらしい家族を形成する「ファミリー・ビルディング」の考え方を基に、DUAL世代のママやパパにアドバイスします。

今回のテーマは子ども同士の「いじめ」。すぐ手が出てしまう、仲間外れにされている、お友達に悪口を言われて登園拒否になってしまった……保育園や幼稚園で子ども同士のトラブルが起こった場合、親はどう対応すればいいのか、山本直美さんに聞きました。

相談「思うようにいかないとすぐにお友達に手が出てしまう息子。最近は周囲に謝りっぱなしです」

Q. 自分の思い通りにならないとすぐに手が出てしまう年長の息子。おっとりおとなしいお友達がターゲットになっているようで、お迎えの際に連絡を受けるたびに心が沈みます。「たたいたりしたらダメ」ときつく言い聞かせてはいますが、なかなか直りません。

A. 「たたいてはいけない」と注意するだけでは、解決することは難しいでしょう。頭ごなしに「ダメ」というのではなく、「どうしてそんなことするのかな?」と、本人に考えさせることが大事です。暴力ではなく「言葉」で表現できるように、お子さんをサポートしてあげてください。園の先生にも相談して、当人同士だけでなくクラス全体で「こういうときはどうすればいい?」と考えてもらう時間を持つことも一つの手です。

 木々も色づき、少しずつ秋が深まってきましたね。子どもたちにとっては運動会や音楽会など、たくさんの行事を経験しながら大きく成長する時期です。

 今月は「いじめ」がテーマですが、これはとても繊細な問題だと思います。

 大前提としていじめには絶対反対ですし、皆さんもそう思っているのではないでしょうか。ただ、根深い問題が背景にある場合、いじめをしている子に「やってはいけない」と言うだけでは簡単に解決しないこともあります。例えば、「自分に自信がない」「誰かと一緒じゃないと自己表現できない」「自己顕示したい」「家庭に何かしら不安や問題があってストレスを発散したい」……などその子自身が抱えている問題と、「いじめをしてしまう」ことに関わりがあるためです。

 また、いじめは子どもだけの問題ではなく、周りの大人も「自分がどうありたいと思っているか」、そして「それを普段からどのように子どもに伝えているか」を問われているのではないかと思います。

「こういうときはどうすればいい?」 自分たちで考えさせる

 私が幼稚園の先生をしていた時にも、日々クラスの中でいろいろな問題が起こりました。でも、起きたことにその都度対処するだけでは、なかなか根本的な解決にならないのです。それぞれの子が持つ長所や価値観を個性としてきちんと受け止めたいと思う一方で、「クラス運営」という視点でどうありたいかを考えていかないと、クラスはきちんと機能しないのですよね。

 そこで年長さんの担任だった時、「クラスのことをみんなで考えよう」という時間を設けることにしました。クラスをどう良くしていくか、子どもたちと相談して解決するための時間です。

 その中で、クラスで大事にしたいことを担任からのメッセージとして具体的に伝えました。例えば「みんな仲良くしよう」といった漠然としたメッセージではなく、「お友達が一人でいたときには声をかけてほしいな」「寂しい人がいないか、周りをよく見てみよう」「誘ったときに『(仲間に入らなくても)いい』と言われたときは、無理に入れなくてもいいんだよ」というように。

 具体的にそう伝えた結果、仲間に入れず寂しそうなお友達がいる時には、みんなで声をかけ合うようになりました。その後は「先生がお願いしていたように、お友達に声をかけてくれるようになってうれしいな」とフィードバックすることで、子どもたちの中でそれが連鎖していくようになるのです。

 小学校低学年くらいまでは個性と個性のぶつかり合いですから、大人が全体を見てメッセージを発していくことが重要です。トラブルが起こった時だけ対応する「対症療法」ではなく、普段から「お友達同士でケンカになったら、周りはどうしたらいいんだろうね?」と一緒に考え、「困っているお友達を放っておいちゃいけないよ」と具体的に伝えることが大切です。