いじめっ子もいじめられっ子も「言葉」で伝えることが苦手

 いじめる子といじめられる子の共通点は、言葉を使ってコミュニケーションするのが苦手だということです。

 特にいじめる子は、言葉が稚拙なことが多いように思います。「自分の言葉」を相手に伝える習慣があると、手を出したり、いじめという表現方法を選んだりしなくて済みます。

 また、性格や行動がおっとりしている子はお友達と上手に距離を保てず、トラブルに巻き込まれがちです。軽い気持ちでのじゃれ合いが、発展していじめになってしまうこともあります。反応が弱いと相手が面白がってエスカレートすることがありますので、「嫌だな」と思ったら最初に「イヤ!」と大きな声で言えるように伝えてください。

 最終的には「子どもたちが自分にどれだけ自信を持っているか」に尽きると思います。年長になる頃には子どもたちの社会性も伸びてきますから、「自分はこう思うけどお友達はどうかな」「自分は人からどう思われているんだろう」など、少しずつ自分を客観視できるようになってきます。自分を信じる力があれば、いじめになりそうな場面で「これ以上やってはいけない」と思いとどまることができます。

大人が先に「正解」を言わない

 では、子どもたちが自分に自信を持てるようになるには、どうすればいいのでしょうか。

 一番重要なのは、「子育てする中で『正解』をすぐに言わない」ことです。子どもが出した答えが大人の思惑と違ったときに「こうしたほうがいい」などすべて答えを言ってしまうと、子どもたちはどんどん自信をなくしてしまいます。

 「それで本当にいいか、もう一度考えてごらん」と自分自身で答えを出せるよう、親が促せるといいですね。子どもの自尊心を育てるには、幼児期に自分で考えてやり遂げるという経験がとても大事です。

 また、いじめは当人たちだけでなく、同じ空間にいる「いじめの場面を目撃した子どもたち」の自尊心をも傷つけます。

 目の前で行われた「理不尽なこと」に対して注意できなかった自分に傷ついてしまうのです。その場でできなくても後日改めて注意する勇気があるかというと、それもなかなか難しい。嫌な気持ちを抱えたまま、結局全員が傷ついてしまいます。だからこそ、大人が対応しなくてはならない問題なのです。

 昔は子どもが多く地域のつながりも深かったので、どこかで「見守られている」と感じられる状況でした。そうした地域の役割が昔ほど機能しなくなっていることも、いじめの問題を大きくしている一因のように思います。人とのつながりが希薄な現代では、子どもたちも「大人に見られていなければいいや」と思いがちです。だからこそ、学校や保育園、幼稚園などで、子どもたちが安心できる環境をどう整えていくか、みんなで考えていきたいですね。