おなかの中には動物園がある?!

 日常生活を振り返ってみると、子どもたちにとっては「やらなくてはいけないこと」がたくさんあります。洋服を着なくてはいけない、外から帰ったら手を洗わなければいけない、ごはんを好き嫌いせずちゃんと食べなくてはいけない……。こうした「やらなくてはいけないこと」を伝えるときは、ガミガミ言うよりも“とんち”を利かせてユーモアで対応したほうがよほど効果的です。

 「外から帰ったら手を洗いましょう。なぜなら、ばい菌が……」と言われても、インフルエンザを経験したことのない子どもにとって、その大変さはなかなかイメージできません。「手を洗う」作業に楽しさを見いだせないからなかなかできないし、理屈は分かっていても面倒臭いのかもしれません。

 ここで登場するのが「ユーモア・アプローチ」です。例えば子どもの手のひらを見て「うーん、ばい菌が3匹いるみたいね!」と言ってあげると、思わず引き込まれて「えーっ!?」と手を見たりします。さらに「今日はスーパーの駐輪場に自転車を置いて、その後あそこにも行ったから、13匹ついてるんじゃない?」などと言うと、慌てて真剣に手を洗ったりします。

 また、「外から帰ったらうがいしなさい!」と言ってもなかなか聞いてくれないとき。「上を向いてうがいを“ゴロゴロ”ってするのは難しいらしいよ、ちょっと聞かせてみて」「3秒続けるのはすごく難しいらしいよ」と言いながら、横で「1、2、3……」と数えてあげると、子どもの興味・関心は「3秒間うがいできるかチャレンジすること」に変わります。

 こうして、結果的にちゃんとうがいできることに。「5秒できたから、明日は7秒に挑戦してみる?」などと園で話していたら楽しくなってきて、おうちで「ママは何秒続くの?やってみて!」と、ママにもチャレンジしてもらう子どももいるくらいです。

 食事に飽きてしまったり、好き嫌いがあってなかなか箸が進まない、そんなときも同じです。「食べないと元気にならないよ」「食べなさい!」と頭ごなしに言うよりも、子どものおなかに耳を当て「ちょっとおなかに聞いてもいいですか? もうあと3つ食べたいと言ってます!」と言うと、その通りに食べてくれるんですよね。

 あるママは、「秘密なんだけど……おなかの中に動物園があるんだって」と言っているそう。「うさぎさんに葉っぱをあげようか」「次はライオンさんにお肉をあげようよ」と言うと、苦手なものでも自分から食べてくれると話していました。

 ファンタジーを楽しめるのも、幼児期の子どもたちならではの醍醐味ですね。大人になるにつれて、少しずつ色々なことを思考できるようになっていきますが、この時期にしか楽しめないユーモアの世界を、ぜひ思い切り満喫させてあげたいですね。

押さえつけるのではなく、ユーモアを持って接してみよう
押さえつけるのではなく、ユーモアを持って接してみよう