元農林水産事務次官が、ひきこもりがちだったとされる長男を刺殺する、いたましい事件が起きました。この連載でも、親子関係が崩壊してしまった当事者を、たびたびご紹介しています。

しかし、今回話を聞いた石崎森人さん(36歳)は、ひきこもり当事者のメディア「ひきポス」編集長を務めながら、家族とビジネスを営んでいます。一時は「死」まで意識したひきこもりから脱し、確執を繰り返した父親と一緒に働くようになった過程を聞きました。

家の階段で筋肉痛に 死が限りなく近づいたひきこもり時代

 石崎さんがひきこもっていたのは、24~26歳のころです。外界との接触は、似たような境遇の人とのチャットだけ。1日1食になり、身長161センチの石崎さんの体重は、43キロまで落ちました。

 「ひどい時は、家の1階から2階への階段を上るだけで筋肉痛になりました」

 ほとんどの時間、横になって過ごしているので身体中が痛み、お尻の皮膚は圧迫されて出血しました。そして、そんな自分を「四六時中責めていました」

 小説を書くのが趣味で、将来は編集者やクリエイターになりたいという思いもありました。なのに、今は階段もろくに上れない。せっかく新卒で入った会社も、3日で辞めてしまった……理想と現実とのギャップが、石崎さんを苦しめます。不眠に悩み、薬で無理に眠れば必ず、ひどい夢を見ました。目が覚めると、現実も「悪夢のよう」

 「薬だけではつらさに耐えられない」と、酒で錠剤を流し込む日が続き、とうとうオーバードーズ(薬物の過剰摂取)で緊急搬送されてしまいます。

 意識が戻った後、弟が石崎さんの乗る車いすを押して救急車まで運んだと聞き、石崎さんは突き動かされるように思いました。

 「ああ、弟に運ばれるような人間は生きていても仕方ない、死ぬ時が来た」

 『死』は、すぐ近くまで来ていました。

ひきこもり当事者のメディア「ひきポス」編集長を務める石崎森人さん
ひきこもり当事者のメディア「ひきポス」編集長を務める石崎森人さん

次ページから読める内容

  • 死んだ目をした子ども時代 甘えられない不安が自己否定に
  • 生きようと決意、「生まれ変わったような感覚に」
  • 親を許すことで、連鎖を断ち切る
  • 親も安心してほしい ひきこもりの子は察知する

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