川崎殺傷事件、そして元農林水産事務次官による長男殺害事件を契機に、「ひきこもり」当事者とその親が大きな注目を集めています。テレビやSNSでは、ひきこもり当事者を犯罪者予備軍であるかのように扱うコメントも見られます。しかし私たちは、当事者の実際の姿を、どの程度知っているでしょうか。

これからは、ひきこもりの子どもを隠さず、公の場で語ろう

日経DUALの連載「親たちへ 私がひきこもった理由」1回目 に登場した「ぼそっと池井多」さん(57歳)は6月1日、「ひきこもり親子 公開対論」というイベントを開き、こう呼びかけました。池井多さんは「『ひきこもり=恥』という社会の認識が加害者を追い詰め、凶行に走らせたのではないか」とも話します。

「事件を起こす、怖い存在」偏見をかぶせないで

イベント「ひきこもり親子 公開対論」を開いた「ぼそっと池井多」さん

 すでに多くのメディアで報道されていますが、川崎市内で5月28日、51歳の男性が小学生ら20人をつぎつぎと刺し2人が死亡、加害者は自殺しました。事件後、加害者の親族が行政の支援機関に「(加害者は)ひきこもり傾向にある」と話していたことが明らかになりました。

 さらに6月1日、元農水事務次官が自宅で長男を殺害。警察の調べに対し「ひきこもりがちで家庭内暴力もあった」「(川崎殺傷事件を念頭に)長男が、他人に危害を加えてはいけないと思った」などと供述したとされています。

 大手メディアの報道によると、川崎殺傷事件では、加害者が伯母らに対し「自分の生活は自分でやっているのに、ひきこもりとはなんだ」などと話したといいます。

 池井多さんは話します。

 「加害者は、ひきこもりを不名誉で恥ずかしいことだと考え、自分が当事者だと認めませんでした。彼がそう考えるようになったのは、社会がひきこもりを恥ずかしい存在だと見なしているからでしょう。当然、家族も自分の子どもを『家の恥』『世間体が悪い』と思ってしまう。ひきこもりを恥だと考える人たちが、当事者たちをどんどん追い詰めていくのです

 そして「この上さらに、ひきこもりは事件を起こす、怖い存在だという偏見をかぶせられては、たまったものではありません」と訴えました。