主体的に行動することで生きる力を得る

 私は2016年に亡くなられた渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』という本が大好きです。この、置かれた場所に咲きなさい、という言葉はまさしく「随所に主となる」ということだと思います。多くの子どもたちは、親に与えられた環境に身を置いています。でも「そこに連れてこられたから仕方なくいる」のではなく、そこで自分が主体となって、自分の花を精いっぱい咲かせることが大切なのです。例えば、私にはとっては「龍雲寺の住職」というのが置かれた場所なのですが、いまこの記事を読んでくださっているおとうさん、おかあさんにもそれぞれ「置かれた場所」があるでしょう。そう、もちろん子どもたちひとりひとりにも「置かれた場所」がある。その中でどれだけベストを尽くしていけるか、を親子で考える時間があってもいいかもしれませんね。

 「随所作主立処皆真(ずいしょにしゅとなれば、りっしょみなしんなり)」についてお話をするとき、私はいつもスタジオ・ジブリの映画『千と千尋の神隠し』のことも思い出します。千尋という10歳の女の子は、ある日不思議な世界に投げ込まれます。そこで彼女は友愛と献身を学び、自らの知恵を発揮して元の世界に戻ってくる。それは誰かに言われた通りではなく、彼女が主体性を持って行動し、彼女自身の内面が変わった結果、彼女が「生きる力」を得たからなのです。

 人生は決していいことばかりではない。でも自分が主となって行動する力が身に付けば、これから先、何があっても力強く生きていけるのだよ

 この映画には宮崎駿監督からの、そんなメッセージが込められているようにも思います。

 長い夏休みの間に、お子さんが何か一つ、「僕はこうしたいんだ」「私はこんなことをやってみるよ」と主体的に行動できるようなものに出合えるといいですね。親ができることは、そのためのチャンスやきっかけを与えてあげることだけ。それに尽きると思います。