首都圏では中学受験への関心が高まり、「受験すること」についてのさまざまな情報は多く目にしますが、意外に公立中学の学校生活については知らないことも多いのではないでしょうか。親世代の経験や、「中学受験より高校受験のほうが大変」「内申点で苦労する」といった漠然としたイメージだけでは、子どもの行く道を自信を持って見守ることはできません。より充実した学校生活を送れるようサポートするためにも、「今の実状」をきちんと知っておくことが必要です。

 今回は、中学受験をしない家庭が知っておきたい公立中学の学校生活の特徴や、高校受験を見据えた勉強への取り組み方について専門家にお話を聞きました。

【中学受験する?しない? 「わが家の正解」を考える 特集】
(1) 中学受験 親が知っておくべきメリット・デメリット
(2) 性格・お金…中学受験するか否か6つの項目で判断
(3) 地方出身親必読!首都圏の最新「中学受験」事情
(4) アンケートで判明!受験した&しなかった親子の本音
(5) 受験しないと決めたら 気になる公立の学習環境 ←今回はココ
(6) 拡大する大学AO入試 「細く長い」探究心が強みに

学校の勉強、部活、塾…公立中に通う子どもはとにかく多忙

 「公立中学は、端的に言って忙しいです。昨今いわれる『ブラック部活』の問題は少しずつ改善の兆しもあるようですが、そうは言っても週6日、7日やるところも多い。部活の種類や学校にもよるので一概には言えませんが、そこに取られる時間とエネルギーは、かなりのものがあります」

 こう話すのは、神奈川県鎌倉市で小中学生を対象に地域密着型の進路指導を行っている、すばる進学セミナー塾長の中本順也さんです。中本さんは公立中学の現状にも詳しく、私立との学習環境の比較や全国公立高校の入試問題分析といった幅広い情報をブログで発信しています。

 部活動は必ずしもやらなければいけないものではありませんが、よほど強い意志を持ってやらない選択をする子は別として、先生や友達など中学での人間関係をつくっていくうえで、その存在感は大きいといいます。

 「そして、中学受験をしないという選択をした以上、高校受験で成功したいという思いがあるので、中学に入ってすぐに塾通いを始めるケースも多くあります。そうなると、学校、部活、塾、学校の宿題、塾の宿題…といった毎日が続く。それでいっぱいいっぱいになってしまう子も中にはいます」

「切り替える力」で学校生活を乗り切れば、タフに成長

 毎日、やることが目白押しの学校生活をこなしていけるのはどんなタイプの子かと尋ねると、「開き直れる子、切り替えのうまくできる子」という答えが返ってきました。

 「忙しい毎日を『こういうものなんだ』と開き直ってしまえば、それを前向きに捉えられますし、切り替えながらやれるとそれぞれに集中できます。例えば部活で嫌なことがあったり、先生に叱られるようなことがあったりしても、塾に来て『先生、こんなことがあって怒られちゃってさあ』みたいにケロッと言える子は強いですね。公立中学の生活は確かに大変ですが、それを乗り切った子どもたちは、私立の子に比べてタフに成長します。精神面でも体力面でも大人になるし、対応力もつきます」

 忙しい生活にうまく順応できる子もいれば、いろんなことをずっと引きずってしまう正反対のタイプも中にはいるでしょう。そういう子には「ありのままの自分でいいんだということをまずは親が評価してあげることが大切」と中本さんはアドバイスします。

 「これは私立に行ってもそうかもしれませんが、自分はこれが好きだとか、こういうことがやりたいんだというのを学校で表に出し過ぎると、出るくいは打たれていじめの標的になったり、からかわれたりすることがあります。だから、外では自分を出せなくても、家の中で『あなたはこういういいところがあるよね』というのを認めてあげてください。

 『あなたはどうして学校ではうまくいかないの?』と聞いてしまうと、親子関係は一気に悪化して自己肯定感もどんどん下がっていく。そうではなく、『ありのままを認める』アプローチを意識してください。ちょうど反抗期が重なるので『うるせえ』とか言われると思いますが、めげずに続けることが大事です。

 そのうえで、本人が学校で何かよりどころとなるものを見つけられるといいなと思います。部活でも、友達と休み時間に話すことでもいい。そういうものを一つ持てると、『〇〇が楽しいからそのために学校に行く』という価値を自分で見いだすことができるので、切り替えができやすくなります

 続いて、多くの親が気になる「公立中の学習環境」についても詳しく聞いていきます。

<次のページからの内容>
● 授業はアクティブラーニング重視、学校以外での「知識の定着」が必須
● 高校受験は選択肢が少ない?
● 内申点は「評価される自分」を探す成長の機会
● 「毎日やること」をつくって、小学生のうちからルーティン力を
● 高校受験は、自分の進む道を初めて自分で選ぶすてきな経験