首都圏では中学受験が過熱しています。子どもが小学生の人はもちろん、まだ保育園児の人の場合でも、パパやママが集まる場で「中学受験する?しない?」という話題が上がることが少なくないのではないでしょうか。住んでいる地域によっては、公立の小学校でも「中学受験率」がクラスの6割以上に上り、まったく受験しないでそのまま地元の公立中学校に進学する生徒が少数派というケースも。そうした環境で子育てしていると、つい「周りに影響されて、何となく中学受験をさせる」という流れになりがちですが、知っておきたいのが、中学受験にはメリット・デメリットもあるということ。そこで本特集では、中学受験をするかしないかを検討する際の判断基準を、様々な観点から整理していきます。第1回は、お二人の教育の専門家に伺った話を基に、主なポイントを解説します。

【中学受験する?しない? 「わが家の正解」を考える 特集】
(1) 中学受験 親が知っておくべきメリット・デメリット ←今回はココ
(2) 性格・お金…中学受験するか否か6つの項目で判断
(3)  地方出身親必読!首都圏の最新「中学受験」事情
(4) アンケートで判明!受験した&しなかった親子の本音
(5) 中学受験しないと決めたら 気になる公立の学習環境
(6) 拡大する大学AO入試 「細く長い」探究心が強みに

 「中学受験は、みんながするからうちも、といったノリで軽く決めるものではありません。もっと根本的なところから考えていく必要があります」。小学生から高校生までを対象にした学習塾「ITTO個別指導学院 蒲田大森校・池上校」などを運営するQLEAの教育事業部部長で、首都圏の高校受験を控える保護者向け教育情報サイト「スクールポスト」を主宰する石井知哉先生はこのように指摘します。

 「中学受験が盛んな地域などでは、“最初に中学受験ありき”で考えてしまう傾向がありますが、まずは『子どもが幸せな人生を歩んでいくためには、どうしたらいいか』というところから考えることが大切です」(石井先生)

 また、小学校教諭を22年務め、現在は小学校教諭を目指す大学生に指導を行っている、帝京平成大学現代ライフ学部講師の鈴木邦明先生は「中学受験をゴールとして考えてしまいがちですが、中学受験は絶対にゴールではありません」と釘を刺します。

 「子どもがどこの中学校に行くとしても、重要なのはそこからの学び。中学受験だけでなく、高校受験でも大学受験でも同じことが言えるのですが、進学した後にどのような学びが得られるのかに目を向けることが一番大切です」(鈴木先生)

中学受験はゴールではない。進学後にどんな学びを得られるかを考えることが一番大切
中学受験はゴールではない。進学後にどんな学びを得られるかを考えることが一番大切

 「そもそも教育の目的は、将来子どもが自立して生きていける力をつけること」と石井先生は言います。

 「そのために学習環境を整えてあげるのが、親の役割です。社会に出るまでにどんな学びを得てほしいのか、という大きなイメージを固めたうえで、それがかなえられるのは私立か公立か、中学受験か高校受験かといった具合にブレークダウンして考えていきます。そうした長期的な見通しがないままだと、家庭の方針や自分の子どもに合った進路を選択することはできないはずです」(石井先生)

 どうしても「中学受験ありき」で考えてしまう人は、中学受験にはメリットとデメリットがあることを踏まえておく必要があります。

 次ページから詳しく解説していきます。