子どもと公園でくつろぐ時間は、奇跡

 この5年、多くの自治体が待機児童ゼロを目指して奮闘しています。数が激減した子育て世代をいかにつなぎ留めるか、幼児教育や医療費の無償化などのサービス合戦が繰り広げられています。ただ、保育園が増え過ぎたことによる質の低下は否めません。幼児教育に投資することが政策的に最も教育効果が高いと言われていますが、それと真逆の状況になりそうです。では、保育園では期待しづらい教育部分をどう家庭で補うのか。

 私自身、息子は9時から18時半まで保育園、そこから食事や入浴をして寝るのが22時を過ぎます。朝7時から私の出勤までの8時半まで(そして朝は送り出すので精いっぱい)、早く帰れた日で19時から22時まで。平日は4時間半しか子どもたちに会えない。落ち着いて会話するのが、お風呂の20分と寝かしつけの20分、合わせて40分程度という日常です。遅ければ夜は寝顔しか見られません。区長になると土日の行事も多く、子どもとぼーっと公園でくつろぐ時間がたまにあると、奇跡のように思えることもあります。一人の親として、子どもたちと向き合う努力をしながら、行政に関わる立場として様々に考えます。これから5年は、保育の質の向上を目指した支援の在り方(保育士の待遇改善や教育部分を担う外部指導者を入れるなど)や、保育園に行かなくても育児と仕事を両立できる仕組みなどを検討すべきだと考えています。

 かつて女性起業塾の講師をしていたとき、受講者の子育て世代といつか実現したい夢として話していたのが「みんなが子どもを連れて働きに来る、子どもを見る担当者もいる。幼稚園から小学校から子どもたちがそこに帰ってくる、食事はみんなで作る、おかずを持ち帰って家族で食べる人もいれば、そのまま職場で何人かと食べて帰る親子もいる」というコワーキングスペースでした。事務代行やデザイン・ウェブ関係ならこうした働き方もあり得ると今も思っています。仕事と家事育児、つまり生きることがシームレスにつながった生活。これからの5年間が、そんなモデルが当たり前になるための、企業の支援やIT活用も問われる5年間になるといいなと思っています。