実子がいても、共働きでも。里親は必要とされている

 私も、夫を説得して里親研修を受けた。まず、面接があって制度や研修スケジュールを示される。丸一日の座学やグループワークが4日ほど、児童養護施設や乳児院での実地研修が2日ほど。その後、収入証明や住宅の間取りに至るまで、様々な書類を提出し(正直、多忙な中ではそろえるのに苦労した)、家庭訪問による子どもも含めた面接があり、夫婦それぞれの成育歴を聞くような個別面接がある。そこまでやって、審査会を通ってようやく決まる。

 やはり、子どもの命を預かり、特に傷ついた子どもたちを受け止めるだけの覚悟と環境は問われる。今は、最後の審査会の手前まで来ているが、区長という立場と夫の仕事を考えると、今住んでいる地域にいて学校園に通う子どもしか預かれない。保育園や小中学校に通っている子どもなら、預かって実子と同じように送り出せる。

 「この程度しかできないけれどいいんでしょうか」と問うと「それでもありがたい。保育園や学校に通っている子を預けるケースも多い」と返ってきた。とにかく、足りないのだ。

生野区役所の絵本イベントには、多くの親子連れが来てにぎわった。絵本の読み聞かせを通じて、より豊かな親子関係を育ててほしいと願って開催している
生野区役所の絵本イベントには、多くの親子連れが来てにぎわった。絵本の読み聞かせを通じて、より豊かな親子関係を育ててほしいと願って開催している

 私の描いている、理想の形がある。子育てがしんどくなって、頼れる実家もそばにない。役所に相談すると近所の「パートナー里親」を紹介される。勝手に名付けたものだが、要は「もう一つの実家」のような関係で、子どもを預かってくれる、時には親子で関われる家庭だ。昨年8月に厚生労働省が公表した「新しい社会的養育ビジョン」には「親子里親」という言葉があった。ぜひ実現してほしい。

 児童養護施設が、必ずしも悪いわけではない。