日経DUAL創刊時から、連載「ママ世代公募校長奮闘記」を執筆してきた大阪市立敷津小学校・元校長の山口照美さん。2016年4月からは公教育に関わる職務に就き、DUALでも「山口照美 20年後の未来を生きる力を育てよう!」で熱い言葉を届けてくれました。そして、2018年1月からは、大阪市生野区の区長として、子育て世代だからこその「まちづくり」を考えます。

* 本連載の最後のページには、《区長に質問!コーナー》があります。行政に対する素朴な疑問に山口さんが答えます。ぜひご覧ください。

「欲しい暮らし」を手に入れる

 読者の皆さんは、日々の暮らしの中でどんな「しあわせ」を感じているだろうか。なぜそんなことを聞きたいかというと、区長として「子育て世代がしあわせを感じるまち」を作るにはどうすればいいか、日々悩んでいるからだ。

 今、子育て世代を集めているまちは「高層マンション」「交通の便がいい」「教育の質が高い(ただし塾通い・習い事必須)」都心回帰が進んでおり、保育園に入りにくくても人が集まっていく。

 職場・買い物・保育・教育がコンパクトに周辺に集まっていれば、移動時間が浮く。それほど、効率化重視の世の中になっているのかもしれない。それは私も多忙なので分かる。

 ただ、合理性だけでなく、「暮らし方のバリエーション」を増やしたほうが、もっと楽に生きられると思う。

 私が区長を務める大阪市生野区では、広報紙に『いくのdeリノベ』という連載を設けている。生野区は、大阪24区中3番目に空き家が多い。それも長屋が圧倒的に多い。なかなか流通に乗らない古い家を、リノベーションして雑貨カフェを開いたり、アーティストがアトリエ兼住居にしたりしている事例を、ライフスタイルごと紹介している。  

生野区役所の広報チームが、区内のリノベーション事例を取材し、ライフスタイルと共に紹介している。空き家対策のみならず、暮らし方の提案にもなっている
生野区役所の広報チームが、区内のリノベーション事例を取材し、ライフスタイルと共に紹介している。空き家対策のみならず、暮らし方の提案にもなっている