人生の登場人物の多さが、人生の幅を広げる

 高層マンションでの洗練された暮らしをモデルにする人もいれば、菜園のある郊外の一戸建てを選ぶ人もいる。ママ友で集まってコワーキングスペースを作り、子どもたちは学校から帰ってきて一緒に放課後を過ごすなんて暮らしもいい。商店街で無料の寺子屋を始めたら、迎えに来たお母さんたちが商店街でお総菜を買うようになったと聞いた。

 もはや終身雇用も年功序列もない。これからは、国籍もない。一つの会社や生き方のモデルに縛られることなく、暮らし方のバリエーションを増やすほどに「これもアリ」と思えるようになる。そして、自分の区役所の職員に一番言いたい。身分保障は確かにあるかもしれない。でも、定年後が30年はあるような時代に私たちは生きている

 「自分のしあわせは何か」という問いに答えられる人生を送るには、職場の外の人たちに出会い、多様な働き方や生き方を知っておくほうが定年後の選択肢が増える。そして、予測不能な世界を生きる子どもたちに「人生に“仕様”なんてないんだ」と身をもって教えてほしい。

 大阪市の中でつくる、高校中退者支援を考えるワーキンググループのリーダーをしている。今まで、18歳を過ぎた若者で所属(高校や専門学校など)を無くした人が行政の網の目からボロボロと落ちまくってきた。予防支援としての中退防止と、既にこぼれた若者に必要な支援を届けるフォローアップの、両方を議論し施策に変えようとしている。

 そんな中、神奈川県の高校で「校内居場所カフェ」を運営するNPO法人パノラマ代表の石井正宏さんの講演を聞く機会があった。高校の中に、カフェを定期的に開く。そこには、年間300人ものボランティアが関わる。近所のオバちゃんもいれば、仕事を持つオジさんもいれば、卒業生もいる。

 「人生の登場人物が多いほど、その子の生存確率は上がる