再び妊娠! でも、悪い予感は的中した
このクリニックでは、タイミング法に1回トライした後、すぐに体外受精にステップアップしました。そして、今度は1回目の体外受精で妊娠反応が出たのです。今まで何度もトライして、一度しか成功しなかったから、これはやっぱりうれしかった。
それでも、前回の枯死卵のことがあったので、もう手放しで喜ぶことはできませんでした。「一つステップを上がったということなんだ」と、なるべく冷静でいようと努めました。なんとなく、そんなに簡単に出産までたどり着けるとは思えなかったのです。
そして、そんな予感は、やっぱり当たってしまいました。
軽い出血があり、すぐにクリニックに電話をすると、「安静にしてください。出血が止まらず、もし心配なら来てください」と言われました。できるだけ動かないようにすると、それ以上出血することはありませんでしたが、数日後、不安に思いながら検診に行くと、流産していました。
もうすぐ3カ月というところで赤ちゃんは成長を止め、それまで元気にドクンドクンと動いていた心臓も止まっていたのです。
一度おなかに来てくれても、こんなことになることもあるんだ……。ただただ茫然として、先生の言葉に「そうですか」と答えるのが精いっぱいでした。
このクリニックに転院してから、夫はできる限り検診に付き添ってくれていて、このときも車の中で待っていてくれました。夫のところに戻ると、私が口を開く前に、「どうした?」と尋ねてきました。私の顔を見て、何かあったとすぐに分かったんだと思います。
「赤ちゃんの心臓、止まってた……」と伝えると、夫もとても驚いて、「動いていたのにな……」と言いました。それからはお互いほとんど無言でしたが、夫はカフェに連れていってくれ、2人で普通にお茶を飲みました。ただそばにいて、一緒にお茶を飲んでくれる。その時間で、私の気持ちは静かにリセットされていきました。
思えば、以前の枯死卵のときも、夫は自分を責める私に「今はそういう時期じゃなかったんだよ」と言って、頭をなでてくれました。それで、私は「ああ、そう思っていいんだ」と思えたのです。
言葉数は多くないけれど、私にとって必要なことをちゃんと伝えてくれる。そんな人が一番近くにいてくれる。そのことは、私にいつも力を与えてくれました。
また、次がある。赤ちゃんは私のおなかに来てくれた。私は、妊娠できる体だったんだ。だから、諦めない。私はママになり、夫をパパにするんだ。
そう思い直し、次の体外受精に向けて、体を整え始めました。赤ちゃんに会える日がすぐそこまで近づいてきていたことを、このときの私はまだ知りませんでした。
(構成/荒木晶子 撮影/鈴木愛子 企画/後藤美葉)