おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5才と3才の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 長くつらい治療を乗り越え、7回目の体外受精で待望の赤ちゃんを抱くまでの日々を、振り返って語ってもらいました。前回は、体外受精にステップアップしてからのトラブルや4度目の体外受精で妊娠反応が出たものの、枯死卵という“ウソの妊娠”だったこと、治療を一度お休みしようかと考えていたことなどについて語ってもらいました。第3回は、2度目の転院をするころからのお話です。

2度目の転院で出会った“運命の先生”

 転院したのは、本当にたまたまでした。それまで治療や病院のことにはほとんど口を出さなかった夫が、急に「転院しない?」と提案してくれたのです。誘われて出席したパーティーで不妊専門クリニックの院長先生に出会い、「うちへいらっしゃい。なんとかしてあげるから」と言われたのだそうです。

 そのクリニックは、不妊治療ではとても実績のあるところでした。2年前に最初に転院したころに病院名を聞いたことがありましたが、院長先生は男性だったので、まだ「妊娠できたらいいな」くらいの気持ちだった私は、通院しやすい場所であることや女医さんであるなどの条件を優先させていたのです。

 でも、体外受精に進んでもなかなか妊娠反応が出ず、やっと着床したと思ったら“ウソの妊娠”だった。次の体外受精でも、受精卵をおなかに戻せなかった。治療をしても、必ず授かるとは限らない……。

 そんな現実を目の前にして、一度治療をお休みしようとしていたタイミングで声をかけていただいた。そして、夫が会ってすぐに「お任せしたい」と思ったほどの方なら、これは運命なのかもしれない

 そう思って、翌日すぐに連絡を取りました。予約が取れたのは、2010年のクリスマス。私たちにとって、プレゼントになるようなことが起きるんじゃないか。そんな予感がしていました。

 初めての予約の日、院長先生は私にこう断言しました。「絶対に赤ちゃんを抱っこさせてあげる」。

 私は、「絶対」というのは自分で決めることだと、それまでずっと思っていました。未来は誰にも分からないのだから、「絶対大丈夫」も、「絶対ダメ」も、自分の気持ち次第。自分がどうするかによって変わるものだと思ってきました。

 でも、院長先生は、「絶対」と言いました。

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