組織づくりに混乱はつきもの。恐れず話し合おう

林田 体制づくりは早いほうがいいということですが、現時点で分業体制が構築されてしまっているという夫婦はどうすればいいでしょうか。

浜屋 今の分業体制に夫婦ともに満足しているのなら、問題ないですよね。ただし、夫婦のどちらかが「私にばかり負担がかかっている」あるいは「本当はもっと育児に関わりたい」といった不満を抱いているのであれば、いつの時点からであっても体制の見直しにトライすべきと思います。そういうご夫婦も、共働きの子育てはまだまだ続くと思うので、今からでも再構築は遅くありません。

 心理学者のタックマンによるチーム形成モデル(下図参照)によると、新しい体制は手探りの形成期から始まり、お互いがぶつかる混乱期を経て、安定した統一期に入ります。つまり、いつ形成したとしても必ず混乱期は訪れるので、なるべく早くチームを形成したほうがいいということなのです。


出典:Bonebright,D.A.(2010) 40 years of storming: a historical review of Tuckman’s model of small group development. Human Resource Development International. Vol.13 No.1 pp.111-120.を基に作成

 「私さえグッと我慢すれば、混乱期は避けられ、家族はハッピーだ」と思って我慢していると、いつか不満が爆発します。どんなチームでも混乱期は避けられないなら、なるべく早くチームを形成して体制を立て直したほうが、結果的にみんなが早い段階でハッピーになるということです。

林田 自分の気持ちに蓋をしないことが、結果としてお互いの幸せにつながるということですね。

浜屋 混乱期といっても、別に取っ組み合いのけんかをする必要はないので、違和感や願望を表に出して、お試ししながらすり合わせていく「必須のプロセス」と捉えるといいと思います。夫婦はもともと他人なので、考え方は違って当たり前。それぞれの考えを机上に出し合う機会を早めにつくることが大事だと思います。個人的には「混乱期を恐れるな」と言いたいです。

林田 本の中では、チームづくりにおいては妥協も必要だと書かれていますね。

浜屋 チームづくりをうまくやっている人にヒアリングすると、「譲るべきところ」と「譲らなくていいところ」をうまく区分けしています。また、相手に対する妥協だけではなく、自分自身に対する妥協もポイントです。自分の中で定めている基準や水準を、相手にも求めないということですね。「まあ、いいか」というラインを決めて、蒸し返さないことが大切です。

林田 そういう意味では仕事も同じですよね。ダイバーシティーが盛んに言われている昨今、考えや価値観の違う同僚や取引先と、話し合っていく過程で折り合いをつけていくことがこれからの職場では求められるはずです。

浜屋 全くその通りですね。グローバルなレベルのダイバーシティーに比べれば、家庭内のダイバーシティーなんて、たかが知れている「超初級編」ですから。もちろん簡単にメンバーチェンジできないといった、家庭ならではの難しさもありますが、これくらいの話し合いができないで職場でダイバーシティーなんて口にできないぞ、という前向きな気持ちで取り組んでもらいたいですね。

 とはいえ、チームがそれなりに回り出すには1年はかかると見てください。わが家の経験を振り返っても、保育園に通い出した最初の1年は思いもよらないことがたくさん起こりました。職場に復帰して、慣れてきたと思ったらゴールデンウイークあたりで子どもが体調を崩し、夏を越えてようやく軌道に乗ったかなと思ったら秋からインフルエンザが流行する、みたいな。変化の激しい時期を一巡するまでは、共働き家庭の子育てはスムーズにはいかないと経験的にも感じます。

林田 体制を作って終わりではなく、現実的にはそこから調整していくことが求められるということですね。

浜屋 チームでやりくりしながら微調整していく、ある種の緩さが必要だと思います。子どもも二人目が生まれればまた環境は激変しますし、夫婦のどちらかが転職したり、職場で異動があったりしても変わります。

 でも、慣れてくると、「さあ、今度はどうやって乗り切ろうか」と腕まくりする感じになってきますよ。最初は1年かかったけど、今度は1カ月で適応したというように、短い期間で対応できるようになります。