ママ一人に育児、家事の負担がかかってしまう“ワンオペ”解消に向けたノウハウとして、様々なリソースと連携したマルチオペレーション型の「マルオペ育児」へのシフトを提案する本連載。今回は、「Teamわが家」のメリットを『育児は仕事の役に立つ』(光文社新書)の著者(中原淳・東京大学准教授との共著)である浜屋祐子さんと一緒に、改めて考えます。

 仕事や家事に追われ、多忙な共働き家庭。「自分以外のリソースとの連携なんて面倒。一人でやったほうが早い」という声もよく聞かれます。子育ては極めてプライベートな領域なので、他者に頼ることに抵抗を感じる方も多いようです。でも、浜屋さんによると、チームでの子育ては、家族にも自分自身にもメリットがいっぱい。「両立の体制づくりは仕事に必要な能力の向上にも役立つ」ということが、浜屋さんの調査で明らかになっています。

 前回は、浜屋さんがなぜ「育児と仕事」を研究テーマに選んだのか、浜屋さんご自身の経験を交えながら伺いました。今回は、育児は仕事に具体的にどう役立つのか、「Teamわが家」構築に必要なマインドとは何かということについてお聞きします。キーワードは「混乱期を恐れない」「ペルプシーキング志向」です。

チーム育児のベースとなる三つの要素

浜屋祐子さん
浜屋祐子さん

林田 浜屋さんが提唱する「チーム育児」について、もう少し詳しく教えてください。

浜屋祐子さん(以下、敬称略) 夫婦のどちらかが抱え込む育児ではなく、夫婦が中心となって家庭内外の様々な人を巻き込みながら行っていく育児が「チーム育児」です。時間に制約がある共働き夫婦は、他者から様々なサポートを得ながら育児をしていく必要に迫られます。そして、チーム育児のベースとなるのが「育児の体制づくり」です。

 体制づくりは大きく三つの要素で構成されています。一つ目は「協働の計画と実践」です。具体的には、家庭内でパートナーと役割分担をしたり、状況に応じて分担を見直したりといった、家庭内での連携です。二つ目は「育児情報共有」。これは一つ目の「協働の計画と実践」を下支えするもので、家庭内での情報共有や方針の話し合いを指します。そして三つ目が「家庭外との連携」です。保育園やベビーシッターなど、家庭外の人に育児を任せるための良好な関係作りとその維持、日々の連携です。これらが共働き夫婦のチーム育児構築の基盤となります(下図参照)。

林田 浜屋さんの研究は、この三つの要素と仕事の関係を分析されたということですね。

浜屋 そうです。これら三つの要素を自ら積極的に行っている度合いと、仕事上での成長がどう関係しているかということを分析しました。その結果、「協働の計画と実践」と「家庭外との連携」は、仕事での「リーダーシップの向上」にプラスの影響を及ぼしていることが分かりました。当然のことながら「職場での発達的挑戦」、つまり職場での経験は「リーダーシップの向上」にプラスですが、その影響を除いても、育児での経験はリーダーシップの発達に効果があることが分かったんです。