ママ一人に育児、家事の負担がかかってしまう“ワンオペ”解消に向けたノウハウとして、様々なリソースと連携したマルチオペレーション型の「マルオペ育児」へのシフトを提案する本連載。今回は、「Teamわが家」のメリットを『育児は仕事の役に立つ』(光文社新書)の著者(中原淳・東京大学准教授との共著)である浜屋祐子さんと一緒に、改めて考えます。

 仕事や家事に追われ、多忙な共働き家庭。「自分以外のリソースとの連携なんて面倒。一人でやったほうが早い」という声もよく聞かれます。子育ては極めてプライベートな領域なので、他者に頼ることに抵抗を感じる方も多いようです。でも、浜屋さんによると、複数の人間が子育てに関わる“チーム育児”は、家族にも自分自身にもメリットがいっぱいあるそうです。「両立の体制づくりは仕事に必要な能力の向上にも役立つ」ということが、浜屋さんの調査で明らかになっています。

 前編の今回は、浜屋さんご自身の紆余曲折の経験と、育児と仕事の関係を調査するに至った理由を中心に伺います。キーワードは「ワーママ呪縛」と「夫婦&家族の全体最適」です。

林田香織さん(左)と浜屋祐子さん(右)
林田香織さん(左)と浜屋祐子さん(右)

「Teamわが家」と相通ずる浜屋さんの著書

林田 浜屋さんに初めてお会いしたのは、『育児は仕事の役に立つ』を出版される少し前でしたね。「Teamわが家」のコンセプトを広めていこうとしていたときに、本の出版予告をたまたま拝見したのですが、私が考えていることとほとんど同じだ! と驚きました。すぐに浜屋さんにコンタクトをとって、突撃で会いに行きましたね。その後、ファザーリング・ジャパンのフォーラムにご登壇いただくなど、色々とお世話になっています。まずは、日経DUAL読者の皆さんに、自己紹介をお願いします。

浜屋祐子さん(以下、敬称略) 日経DUAL読者の皆さん、初めまして、浜屋祐子です。私は銀行での経済調査業務から社会人生活をスタートした後、いくつかの会社で人材マネジメントに関わる仕事を行ってきました。しかし約3年半前、一念発起して仕事を中断し、大学院に進学。大学院に提出した修士論文を土台として執筆したのが、『育児は仕事の役に立つ』という新書です。

 今は、進学前の勤務先に再入社して社会人向けの経営教育事業に携わりつつ、社外では子育てしながら働く方、働きたい方を応援する活動を行っています。家族は、夫と小学生の男女2人の4人家族で、毎日が合宿のようなにぎやかな生活です。

林田 浜屋さんに最初にお会いしたときは、初対面とは思えないほどすっかり意気投合しましたよね。

浜屋 そうでしたね。私が考えていたことを、林田さんは既に現実にアクションとして起こそうとされていると知って、喫茶店のテーブルに身を乗り出すくらいうれしかったです。私は仕事と子育てを両立する体制づくりは、普段の業務でも役に立つということを、誰が読んでも分かるように数字で示そうとしました。しかし、実際にチーム育児をどうやって構築するかという具体的なアクションの部分は、机上の研究ではなかなか伝えることができません。

 林田さんの「Teamわが家」は、家族や友人、アウトソーシングなど、「どれか一つだけでもいいから子育ての体制に加えて、自分なりのチームを構築すればいいんだ!」というヒントを、多くの方が得られるコンセプトだと思います。私の研究は、「Teamわが家」を構築するメリットやその根拠を指し示すものとして、後押しする力になれそうだと感じました。

「Teamわが家」の構成図