中学受験では、多くの塾で5年生の3月から「合否判定模試」が始まります。この模試は、志望校の合格可能性が現時点で何%であるかが判定され、志望校を選ぶ上での貴重な判断材料となります。6年生の12月まで通算4~7回実施され、本番が近づくにつれて現実味が増します。合格率は20~80%と幅があり、その数値の変動で一喜一憂する親子がいますが、「注視すべきは、そこだけではありません」と話すのは、本連載でもお馴染みの西村則康先生。実は模試の結果には、苦手克服や得点アップにつながる様々なヒントが隠されているのです。となれば、それを利用しない手はありませんね。模試結果の活かし方をプロに伝授してもらいました!

模試の結果には、今後成績を上げていくためのヒントが隠されている

 受験生の親御さんに伺います。子どもの模試の結果が返ってきたら、真っ先に見るのはどこですか?

 偏差値? それとも、合格可能性のパーセンテージ?

 どちらを先に見るかは分かりませんが、おそらくほとんどの親御さんがこの2つの数値を確認するでしょう。そして、今回は「上がった」「下がった」とこだわってしまうのではないでしょうか。

 「でも、見るべき場所はそこだけではありません。偏差値や合格可能性は結果であって、その数値を見ただけでは、成績を上げていくことはできないからです。模試の後、まず注目すべきところはお子さんが書き込んだ解答や、問題用紙に残されたメモや下線、傍線、そして計算の跡などです。お子さんがどんな問題でどんな間違いをしてしまったのか、その原因は何かを突き詰めていかなければ、次に生かすことはできません」

 西村先生によると、模試の結果から次に生かすべき要素は2つあります。

 ① 今すぐ得点アップにつながる問題を見つける。
 ② 今は解けているけれど、この先忘れてしまいそうなところをチェックしておく。

 詳しく説明しましょう。

 ①は少し気をつければ、得点が取れていたはずの問題です。「計算間違い」「図が描けていなかった」「問題文を読み飛ばしていた」など、テスト終了後、家で親と一緒に振り返ってみると「これは解けたな」と思われるもの。悔しいミスですね。でも、これらはすぐに修正していけば、次の模試では確実に点数アップにつなげていくことができます。「あぁ~、やっちゃった」で終わるのではなく、「次は絶対にミスしないぞ」という気持ちで振り返りましょう。

 また、正解した問題も放置していてはいけません。②は今回は運良く正解できたけれど、この先忘れてしまいそうなやや不安な問題です。今回の模試では「○」だけど、もしかすると入試本番では「×」になってしまうかもしれない……。そう思ってしまうのは、「納得したうえでの理解」まで到達していないから。そこをきちんとクリアしていかなければ、本番で確実に点を取ることができません。分からない状態をそのままにせず、ここでもう一度しっかり復習しておきましょう。

 このように、お子さんの解答には次に生かすべきヒントが隠されているのです。えっ!? 子どもの書いた解答なんて見たことなかった!? 「実はそんな親御さんは多いんです」と西村先生。

 「今の中学受験の問題は、大人でも難しく、問題を見てもさっぱり分からないという親御さんがいます。でも、解説を読めば理解はできると思いますし、何よりお子さんが学習している内容やレベルを知るのはとても大事です。問題の中身も見ずに、ただ数値による結果だけを見て、お子さんの出来を判断してはいけません」