多くの小学校では二学期になると、運動会や学芸会などのイベントがある一方、低学年でも学習内容がより本格的になっていきます。お子さんをよく観察していると、「学校から帰ると、ぐったり疲れている」「集中力が続かず、宿題をするのに時間がかかる」など、気になる変化が見られませんか? 宿題が増えたり、イベントの準備で体力も消耗して……一学期とはまた違う学校生活に順応する段階で、子どもたちに疲れが見えるのはごく自然なことかもしれません。疲れや集中力の乱れが見られる子どもに対して、本来持っているやる気を取り戻し、学習に対して苦手意識を生まないために、親としてどんな関わりをすればいいのでしょうか?

「子どもの内側から湧き出る主体性を育むこと」を乳幼児期からの教育方針とするモンテッソーリ教育。小学校のカリキュラムに沿う形で、子どものやる気を育てる学習指導をしている日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家小学部」に、子どもの「やりたい!」「知りたい!」を育むヒントを聞きました。

【年齢別特集 小学校低学年のママ・パパ】
(1) おとなしい子もハキハキ発言できる3つのルール
(2) 家庭でできるプレゼン力養成 生まれ順で方法が違う
(3) モンテッソーリ 小学生の集中力とやる気が向上 ←今回はココ
(4) 低学年のモンテッソーリ 子が伸びる家庭での関わり

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

すべての子は本来、自分から「学びたい」気持ちを引き出すことができる

 「人は誰でも自ら育とうとする力を持っていて、子どもが自分から知りたいと思ったときの吸収力は、大人が計り知れないほどのエネルギーを持っている」とは、日本にモンテッソーリ教育を広めることに半生を懸けた、故・相良敦子さんの言葉です。

 イタリアの女性医学博士マリア・モンテッソーリ(1870-1952年)が、子どもが「自ら育とう」とする環境づくりに力を入れることを創案したモンテッソーリ教育。相良さんによると、1〜6歳までの幼少期に脳の発達段階に合わせて、子どもの内なる好奇心や興味に沿って五感を動かす体験をさせることで、知性や知的好奇心などの自主性を育むことができるといいます。

 「子どもが一人でできる環境を大人が整える」という観点で、特に幼児期の関わりを重要視するモンテッソーリ教育。しかし、集中力や自主性は幼児に限らず、生きる力を備えるために一生関わってくる大切な能力です。小学生のわが子に、十分な自主性や集中力、やる気が見られないと感じたとき、モンテッソーリ教育の観点から、大人にはどのような関わりが求められるのでしょうか。

集中力の低下はどこから生まれてくるのか?

日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」副園長の櫻井美砂さん
日本モンテッソーリ教育綜合研究所附属「子どもの家」副園長の櫻井美砂さん

 1978年に日本モンテッソーリ教育綜合研究所の付属施設として開設された附属「子どもの家」には未就学児が通う「幼児部」の他に、週に一度放課後に、他校の小学生が通う「小学部」があります。小学部に通う子には、幼児期にモンテッソーリ教育を受けた子もいれば全くの未経験という子もいます。小学生でモンテッソーリ初体験という子どもに対するアプローチを副園長の櫻井美砂さんに聞きました。

 「モンテッソーリ教育の環境に慣れていない子は、最初のうち、主体的に自分の好きな勉強をするということに戸惑う子もいます。でも、環境を整えて適切なサポートがあれば、いつからでも子どもたちの『学びたい』という気持ちを育むことはできますよ」と櫻井さん。

 「お子さんに『集中力がない』『学習意欲が湧かない』と悩み、小学生低~高学年から、門をたたく親御さんはたくさんいます。そんなとき、私たちは、まず集中力の低下がどこからきているのか、ということを考えるようにしています」と、適切な環境を整えるうえで、まず集中力の低下の原因を見極める大切さを指摘します。

 「子どもは本来、自分の興味のあることについては高い集中力を発揮するものです。つまり、学校の授業中や学習中に集中力が下がってしまっているというときは、そのもの自体に対する興味が薄れてしまっている状況だということ。他にも様々な原因が考えられますが、集中力不足の根底にあるのが自信のなさであることも多いんです」

 「授業の内容に理解できていないところが残ったままであったり、親や教師の介入が多過ぎてミスを指摘されてばかりいると、その教科への苦手意識が芽生えたり学習全般に対して自信が持てなくなったりすることがあります。集中力を育むためには、興味を持てるような関わりや環境を整えていくことが大切です」

 次のページからは、「子どもの家」の活動を参考に、子どもが学習に興味を持ち続けるための、具体的な学びのサポートについて見ていきましょう。

<次のページからの内容>
・ 苦手なことも好きなことも、自分から「やりたい」と思う子に
・ 「分かる」体験を少しずつ広げて自信をつけさせる
・ 子どもの学習意欲を高める3つのポイント
・ 手を動かし目を使って、体感として理解していく