今の時代に求められるのは学歴か? 人間性か?
現在30~40代のDUAL世代は、就職活動でインターネットを使うようになり、どんな企業にも手軽にエントリーができ、就活のチャンスが広がった。しかし、その一方でエントリーはしたものの、「企業からのDMが届かないのは学歴フィルターがあるからではないか?」と学歴神話を感じずにはいられない経験もした人がいるかもしれない。21世紀となった今、さらに、わが子が就職を迎える10年後もそうした水面下の動きは変わらないのだろうか?
「確かに、学歴フィルターが全くないわけではありません」
そう話すのは、企業の就職事情に詳しい曽和さん。
「ただし、学歴フィルターと学歴の差別では意味合いが異なります。“企業との最初の出会い”というエントリーの部分で、大学、さらには同じ学校でも学部によって、情報が企業から入ってこないということはあり得るでしょう。なぜなら、DMを送るには1件ごとに経費がかかるからです。何万人という不特定多数の学生すべてにDMを送っていては効率が悪く、経費がかかり過ぎてしまう。それは、ビジネスとしては当然の考えです」
「けれど、企業は学歴だけを見ているわけではありません。各社生き残りが厳しい現代、どんな企業の人事も切実に『自社に良い人材を入れたい』と本気で思っています。そのために各社例外なく、学歴よりもその人自身の人間性や中身自体に比重を置いています。ですから、入り口の段階では確かに学歴が影響する場合があるかもしれませんが、出会えれば学歴自体はあまり関係ありません」
性差や学部による有利・不利、浪人・留年の“今”も気になるところ。
「私は約20年前に京都大学教育学部を卒業しましたが、教育学部には来ないけれど、経済・法学部には企業からのアプローチが来たということは実際にありました。業種や会社によるため、一概には言えませんが、大きな流れとして見ると、女性よりも男性、文系よりも理系、文系なら文学部や教育学部よりも法学部や経済学部、理系なら理工学部よりも工学部、農学部よりも情報学部といった傾向は今でもあるかもしれません」
「ただはっきりと言えるのは、業界によって欲しい人材は様々です。今の時代、理系に進むなら大学院まで行かないと就職口がないと思われているようですが、基本的に理系はどんな企業でも需要があります。研究職は院卒が多いけれど、金融やマスコミ業界などでは、院卒よりも大卒のほうが求められています」
「以前は浪人や留年など、卒業時の年齢が高いと不利と言われていましたが、少子化で大学に入りやすくなり浪人が減少していたり、在学中に留学をする学生が増加したりしているので、今はそれほど問題視されていません」
「業界によって求められる学力レベルや専門性は異なりますが、今の時代、企業の動きとしては、学歴よりもダイバーシティーを求めている傾向があります。だからこそ、人事はその人の中身をよく見ているのです」