一人で悩むのではなく、第三者に相談することも考えてほしい(蟇田)

羽生 不登校の子どもは「明日は行く」と言って、翌日になるとまた同じことを繰り返すケースが多いと聞きます。一番近い家族である親は、どういうふうに接したらいいのでしょうか? ここまでは認めてくださいというポイントがあればお願いします。

蟇田 すごく難しいと思います。ただ、一度期限を切り、この日までに学校に行けなかったら、お母さんと一緒に相談に乗ってくれるところに行ってみようか、という話をお子さんに言って、お子さんと一緒に考えてもらうようにしています。その相談は学校に行くことを目的にしたものではなく、今の状況をひとりで抱え込まないで、その子にとっての最善を一緒に考えてくれる第三者に相談してみようか、というスタンスですね。

森本 親の聞き方や話し方によって、あるいはどんな言い方をしても、子どもは自分が非難されているように感じることが多々あります。子どもは学校に行けないことに罪悪感を感じているのに、親から「なんで学校に行けないの?」と言われたら、責められていると感じてしまっても無理ありません。

 「行けないんだね。何かわけがあるのだと思うけど、よかったら話してくれない?」というように聞くと、1回目は無理でも、何回か声をかけるうちに話してくれることがあります

 ふたりの話を踏まえたうえで少し視点を変えると、期限はやはり作ったほうがいいですし、子どもともちゃんと話したほうがいいと思います。けれども、不登校をしている間に家の中で人間力や生活力をつけて、子どもが自分に自信を持てることを作ってあげると、いざ動き出すときに役に立つのではないかと思います

無理をさせない。本人の気持ちを何より優先(黒沢)

 子どもが「明日は学校に行くよ」と言い続けている状況をイメージすると、そもそもゴールが大きすぎるように思います。不登校の子どもにとって、登校を目標にするのはハードルが高いのです。目標は、スモールステップで設定したほうがいいと思います。極端に聞こえるかもしれませんが、家の外に出るのさえつらい子もいます。そんな子には「玄関のドアノブに触ってみる」ということだけでもいい。次は外に出る、それから、とりあえずあそこの公園まで行こう、というように小さなステップを積み重ねていくという方法があります。

黒沢 「明日から行くよ」が続いているのであれば、無理はさせないようにしてください。本人の気持ちをひたすら待つということですね。雨なら行かなくていいよ、と逃げ道を作ってあげつつ、始業式や終業式といった学期の変わり目や、入学式、卒業式などの節目に誘ってみるのがいいでしょう。

 もちろん、学校に行ってもその日だけという場合もあるので、継続の仕掛けを用意してあげることも大事です。例えば「校長室なら誰もいない日が一日おきにあるよ。その日は子どもが校長室にいてもいいんだよ」など、子どもが安心して過ごせる環境を用意しておく。そして、用意はするけれども、行きたくないときは無理をさせないというように、何よりもまず本人の気持ちを大切にしてほしいと思います

羽生 それぞれのご経験に基づいた具体的なお話を聞かせていただき、皆さんありがとうございました。

 たくさんの意見が交わされたパネルディスカッションはここで幕を閉じ、このあと希望者による無料相談会が行われました。次のページでは、パネルディスカッションでは紹介しきれなかった斎さんのお話をご紹介します。