見張りタイプの親が子を放っておいたら子どもが変わった!(蟇田)
蟇田 「結」の会にお子さんの不登校の相談に来られていた方がいます。子どものことをずっと見張ってしまうSPタイプのお母さん(「不登校の親はSPにならず、子を家で安心させて」参照)でした。
そのお母さんは、中学生のわが子が学校に行くことに期待して、毎日、念仏を唱えるように「いつになったら学校に行くの?」と本人に尋ねていました。でも、事態は一向に改善しませんでした。次第にお母さんのほうがまいってしまい、精神的にもダメージを受けている様子でしたので、私はお母さんに「ご自身が若い頃から楽しんでいたことはなんですか?」と聞きました。
お母さんは「走ることが好きなんです」とおっしゃいました。ご自身も友達が少ないタイプで、友達と食事やお茶をするより、ひとりで行動することのほうが好きだったのです。
それならばということで、東京マラソンにチャレンジしてみませんかとおすすめしたところ、運良く抽選に当たり、エントリーが決まりました。お母さんは東京マラソンを完走するという自分の目標に向けて、毎日一生懸命走るようになります。すると、何が起こったと思いますか?
SP状態だったお母さんが、不登校の子を‘放っておく’ようになったのです。
すると子どもはお母さんが頑張っている姿を見て、お母さんを応援するようになりました。東京マラソンの当日は普段は部屋から出てこない子どもが沿道に出て、お母さんを応援しました。そして、お母さんが完走したあと、「僕、通信制の高校に行ってみようかな」と言ったのです。
お母さんは特別なことをしたわけではありません。走ることが好きなお母さんが、自分のやりたいことを始め、子どもに期待することを忘れたら、事態が動いたのです。
このようなケースもあるので、お母さんが自分にとって何か楽しい状況を作るのも、ひとつの手なのではないかと思います。友達を作るのが苦手な方なら、無理に友達作りをしなくてもいいのです。昔取った杵柄ではないですが、歌手を目指していたなら歌を歌うとか、自分ができることを探すのもいいのではないかと思います。
友達が少なくてもいい 大切なのは子が好きなことを見つけること(森本)
森本 不登校の子は友達作りが苦手な子が多いということですが、「結」の会で相談を受けているお子さんも、ほとんどが友達を作るのが苦手です。100人中99人くらいは、人間関係が得意じゃないという子ですね。
ただ、私が思うのは友達が100人いないとダメなの? ということです。私自身はたくさん友達がいることがいいことだ、人生の成功だという世間の風潮については、もう少し考え直さないといけない気がしています。
「僕はひとりでいるほうが楽だ」という子がいても、それは悪いことではありません。友達がいないからあなたは社会でうまくいかないんだよ、ということではありません。
先ほど、大人は子どものネガティブな部分を受け止めてあげてほしいという話がありましたけど、友達に関しても「あなたはひとりでいるのが楽なのだったら、それもいいわね」と受け止めてあげてほしいのです。そして、「だったら自分が好きなことを探してみようか」と一緒になって考えてみましょう。こうして、うまくいったケースも多々あります。