「命・心・体」をテーマにした講演や子育て学講座、執筆など幅広く活動するチャイルド・ファミリーコンサルタント、バースセラピスト、助産師のやまがたてるえさん。中1、小5の姉妹の母でもあり、松戸市教育委員会の教育委員としても、子どもたちの健やかな成長を応援しています。
産後から熱心に情報収集をし、子どもの発達・成長段階をある程度把握しながら、成長を見守ってきたという人も、子どもが小学校に上がると手がかからなくなってきたり、仕事で期待される責任も増えてきたりして、「気づいたら、子どもがあっという間に次のステージに成長していた」と、月日が経つ早さを惜しく思うことがあるでしょう。新連載『見守る・寄り添う 小学生からの子ども学』では、大切な学童期の子どもの成長段階を見守り、いざというときには頼りになる存在として子どもに寄り添えるよう、やまがたさんからアドバイスをもらいます。

落ち着きがない、友達の輪に入れない、忘れ物ばかりする、トラブルが多く先生によく怒られる――。日経DUALの発達障害特集でも大きな反響があった子どもの発達課題。連載最終回では、小学生親であるやまがたさんの当事者に近い視点から「小学生の発達障害・学習障害 もしかして……?と思ったとき」をテーマに親の寄り添い方を考えていきます

 4月から書かせていただいた連載も今回が最終回です。子どもの成長・発達に携わるたくさんの専門家の方がいる中で、小学生の親として当事者に近い立ち位置から、「6歳からの親の寄り添い方」について書かせていただけたことを本当に感謝しています。

 色々な問題が社会にある中で、教育の世界においても「当事者自身が声を挙げても、行政まで届かない」ということは現実にあります。現場と会議室とその先にある行政機関とでは、現状認識のタイムラグがあるうえに、置かれている立場や背景に違いがあるために、本来同じ思いであるはずの「子どもたちの健やかな成長」ということが違うベクトルに進んでいるようにしばしば感じます。

 その中で今回は、小学生の「発達障害」「学習障害」をテーマに、親としてのスタンスを一緒に考えていきましょう。

「うちの子、もしかして発達障害?」と悩む親たち

 「他の子はできるのに、どうしてうちの子にはできないんだろう?」。小学校で日々成長する子どもを見守りながら、そう不安を感じた経験が多くの親御さんに一度はあるのではないでしょうか。子どものお友達に対して、「どうしてあの子はみんなと違う行動をするのだろう?」と気になったことがあるかもしれません。

 数年前までは分からなかったことが医学の進歩や情報の普及によって顕在化し、療育など早期に適切な対処ができるようになりました。しかし、そのことによって保護者が必要以上に不安を抱えてしまう傾向が見られます。例えば、20年前は“個性的な子”“成長が少しゆっくりな子”と捉えられていた子どもたちが、現代では「△△障害」というラベルがつくことによって、親御さんがすぐには現実を受け止められないほど大きな精神的ショックを受けることもあるでしょう。

 子どもの成長・発達は、私たちが育ったころ以上に多様化し、大きな変化が生まれてきています。未就学児・小学生のうちに違和感を覚えていたことが、中学校で初めて“〇〇障害”として顕在化する場合もあります。そうした可能性も視野に入れたうえで、しっかりとお子さんの成長を見つめてみると、「どうして?」という疑問の正体や親に求められる適切な関わり方が見えてくるかもしれません。

発達障害のグレーゾーン 親ができること

 「発達障害」について、発達障害者支援法には以下のように定義をされています。

 【自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの】

 子どもの言動に不安を感じている人は、障害であるかそうでないかという選択肢ではなく、“発達の凹凸”としてとらえてみませんか? 例えば、小学校で通常級に通っていても勉強についていく様子が大変であったり、友達とのトラブルが絶えなかったり、理由はよく分からないが学校へ行きたがらない、など。様々な問題が起きている中に、もしかするとそうした発達の凸凹がその子らしい健やかな成長へと進む中で困難さを生むことがあります。

 親ができることはやはりシンプルに、お子さんを「観ること」「認めること」だと私は思っています。