セミナーでは、様々な立場から不登校に関わるプロフェッショナル5人のパネルディスカッションが行われました。コーディネーターは、本誌編集長の羽生祥子です。
子どもの気持ちに寄り添うのが、スクールソーシャルワーカーの役割(斎)
斎 「スクールソーシャルワーカー」をしております斎と申します。スクールソーシャルワーカーという職業はあまり聞き慣れないかと思いますが、集団や学校に適応できない子どもたちが増えてきた中、子どもの背景にあるすべてのことを考慮して、どこにほころびがあるのかをひもとき、適切な介入をしていく仕事をしています。
私が持っている資格は社会福祉士といって、教員免許ではありません。むしろそれがいいほうに働いていると思っていて、学校の先生たちとは違う関わりをすることが役割かなと考えています。具体的にいうと、ジャングルジムに登る子どもがいて、上から引っ張っていくのが先生方で、スクールソーシャルワーカーは、落ちないように下から支える役割です。そして何より、子どもたちの気持ちに寄り添い、その子にはどんな願いがあって、どんな気持ちがあるのかを一緒に考えていくようなことをしています。
不登校特例校の役割は、子どもの不安を取り除くこと(黒沢)
黒沢 不登校児童や生徒の受け入れ学校の校長をしております、黒沢です。うちの学校には、友達がいない、学習に向かない、教員不信に陥っている、傷つき体験をしたといった子どもたちがたどり着くケースが多いです。
そういう子どもたちは、多くの場合、3つの不安を抱えています。この学校でうまくやっていけるかなという対人不安、ずっと学校を休んでいたけど勉強ができるようになるかなという学力不安、そして、学校を卒業したあと、自分はどういう人生を歩めるかなという不安です。この3つの不安を少しでも取り除けるよう取り組むのが、受け入れ校の役割だと思っていただければと思います。
親御さんと一緒に今できることを考えるのが「結」(結の会 森本)
森本 不登校・引きこもりの子を持つ親の会「結」の家族支援をしております森本です。不登校や引きこもりでなど、なんらかの形でお子さんが問題を抱えていると、親御さんは「自分の育て方が悪かったのではないか」など、自責の念に駆られていることがほとんどです。けれども私たちは、親がこうだったから子どもが不登校になったのだとか、親がこうしてやらなかったから引きこもりになったのだとは考えていません。お子さんは自身の特性や家庭環境、学校での環境など、色々なことが複合的に作用して、今は足踏みをしているのかもしれません。でも、これが一生続くわけではなく、お子さんには今、足踏みをしている必要があるのでしょうという考え方です。そのような視点から「今できることをやりましょうね」と、親御さんを支援しているのが「結」の活動です。
家族の気持ちに立って話ができる相談員を目指している(結の会 森)
森 「結」の相談員をしております森と申します。私生活では4人の息子の母親で、私自身もニート・引きこもりの親を経験しました。わが子が学校に行かなくなり、すったもんだしたときに、嫌がる夫を無理に連れ出し、地域の学校の先生のところへ相談に行ったことがあります。そのとき先生は「お父さん、あなたはお子さんを救うために仕事を辞める覚悟はありますか」とおっしゃいました。気持ちは分からなくはないけれど、夫が仕事を辞めたら、後の子どもはどう育てるの? 私たち家族はどうすればいいの? そう思い、日常生活で役に立ち、その人の立場になって話ができる相談員になりたいと思ったのが、相談員になったきっかけです。ですから、今でも日常生活にこだわって、相談を受けることを基本にしています。そして、楽しくお話できたらと思っています。
お母さんひとりで悩まず、一緒に考えていきましょう(結の会 蟇田)
蟇田 同じく「結」の相談員の蟇田と申します。かつては不登校や引きこもりは家族の責任や本人の自己責任だという風潮がありましたが、今は違います。行政や私たちのようなNPO法人を含め、色々な支援があります。「結」はお母さま中心の相談を受ける団体で、このようなセミナーを通し、皆さんの心配や不安を一緒に考え、解決していきたいという思いで活動を続けています。今日はどうぞよろしくお願いします。
羽生 経歴が多彩な皆さんにそろっていただきましたので、今日は色々な角度からお話を聞いていきたいと思います。