子どもが学校に行き渋ると、見張り役をしてしまう母親が多い(蟇田)

羽生 「日経DUAL」で不登校や引きこもりをテーマにすると、お母さん方から多くの反響が届きます。偶然か必然か、今日も会場にはお母さんの姿が多いようですが、親御さんの支援をしている「結」の皆さんから見て、不登校や引きこもりの子と母親との関係によくあるパターンがあるとしたら、どんなところですか。

蟇田 大人の考えでいうと、子どもは学校に行くのが仕事です。わが子が毎日、学校に行くか、行かないかでモヤモヤしたあげく、子どもがずっと家にいるような状況が続くと、お母さんが四六時中、子どもの見張り役をして、SP(セキュリティポリス、要人警護)のようになってしまうケースがあります。

 子どもが部屋にこもっていたら、生きているかどうか心配になりますし、トイレに行くために部屋から出てこようものなら、子どもの後をずーっと追ってしまう。

 そんなふうにSP状態になってしまったお母さんが家の中にいると、子どもは休めるときがありません。はたからすると不登校や引きこもりは怠けているように見えて、十分に休んでいると思われがちですが、そんなことはないのです。

 家の中が安心できない、安全な状態ではなくなってしまったために、子どもがますます外に出られなくなったり、行動を起こせなくなってしまったケースは決して少なくありません。

ネガティブな感情も受け止めてあげることが大事(森本)

森本 喜怒哀楽という言葉がありますね。私たち親は「楽しいね、うれしいね」というポジティブな感情については、その気持ちを子どもと一緒に喜んで感じようとします。ところが怒や哀、痛いといったネガティブな感情はどうでしょうか。なかなか受け止めるのが難しいように思います。

 例えば子どもが転んだときには、「転んじゃったね。痛かったね」とその子のネガティブな感情を受け止めて、言語化してあげることが大事です。「痛かったね」のあとに「起きようね」と言ってあげれば、痛いという感情を否定しないので、子どもは「僕は悲しくても痛くてもつらくてもいいんだ」ということが分かります。そうすると、その子はもっと自由に生きることができます。しかし、転んだ子どもが、痛いという表情をしたとたんに「泣かないの!」と言うお母さんもいます。というのも、親は子どもからネガティブなことをぶつけられると、どう対応すればいいのか、分からないのですね。そのため、「痛い」と泣かれる前に「泣かないの!」と言ってしまうわけです。そうなると子どもは、親につらいと気持ちを打ち明けてはいけないと思い、感情を出せなくなってしまいます。

 親は子どもからネガティブなことを言われると、つい「うるさいわね」「そんなこと言わないで」「もうちょっと我慢したら?」などと言ってしまいがちです。これからはぜひネガティブなところも「そうなの、○○なのか。つらいね」と受け止めてあげてほしいと思います。

親は自分が許容できない話には耳を塞いでしまう(森)

 たとえ幼い子どもでも、その子なりに考えていることがあるということを、私たちはつい忘れがちです。

 例えば、就労支援の場で「これからどうしたいの?」と子どもに尋ねたときも、親は自分が許容できる範囲の回答ならOKですが、それ以外の返事が返ってくると、まず受け入れません。子どもが「ホストの仕事をしようと思っている」「アニメの声優になりたい」「芸術家になりたい」など、親の想定外のことを言ったときには、聞く耳をもたずに反対するでしょう。

 子どもが学校をやめたいと言ったときもそうです。親は「あともう少し頑張れば卒業できるじゃない」と言いますが、本人には本人なりの事情があり、考え方があります。幼い子でも同じで、幼いなりの考え方があります。

 不登校や引きこもりのお子さんに話を聞くと、「親が話を聞いてくれない」と訴える子がたくさんいますが、親のほうに余裕がないとなかなか子どもの声を聞いてあげられないのですね。

 子どものほうは親のことをよく見抜いていて、「親の許容範囲はこれくらいだから、このくらいまでなら話を聞いてくれるだろう」とある程度、予想しています。親が学校に行かない理由や働かない理由を聞きたいと思っていても、子どもは親の許容範囲を超えそうなときは、言ってもどうせ聞いてもらえないだろうと思って口を閉ざすことがあります。

 ですので、子どもに理由を聞きたいときは、「きっと理由があるんだよね。今は言えないんだよね」と誘い水をかけておき、子どもが話したい気持ちになるまで待ち、ゆっくりと本音を引き出す。そんな感じがいいのかなと思います。