高尾山学園では、学校に来ることを強制しない(黒沢)

 セミナーは不登校の親が知りたいテーマを羽生編集長が聞いていく形で進行します。まずは、学校の先生とのつきあい方、関わり方について聞きました。

羽生 最初に伺いたいのは、不登校気味のお子さんの親御さんからよく聞く、先生との関わりについてです。不登校のお子さんや親御さんは、学校の先生に対して、どうしても不信な思いを抱えてしまうようですが、先生とのつきあい方のヒントをいただければと思います。

黒沢 本校は不登校に特化した教育課程特例校ということで、各教科の授業時間をフレキシブルに変更できる特長があります。公立中学校の年間の授業数は1000時間以上だと思いますが、本校は760時間程度です。

 また、授業中であっても、カウンセラーのいる相談室など大人がいるところであれば、教室からの出入りは自由です。なおかつ毎日、学校に来なくてもいいので、自分のペースで一日おきに来る子もいれば、毎日来る子もいます。授業数に縛りがない教育課程特例校だからこそできることですが、子どもたちには勉強、勉強と押しつけず、学校に来たいと思ったら来てねということで、学校に来ることを強制するようなことは言いません。

親が引きずってでも子どもを学校に連れていくのは得策ではない(斎)

羽生 不登校の子の親御さんは、先生方から「子どもを引きずってでも学校に連れてきてください」と言われる機会が非常に多いと聞きます。普通の学校ですと授業時間がガチガチに組まれているからでしょうか。それに関して、斎さんのお立場からはいかがですか。

 なぜ子どもを引きずってまで学校に連れて行くかというと、先生方はやはり熱心なんですね。先生方の仕事は学校で勉強や人間関係を教えることです。ベースには、なんとかこの子を学校に連れて行きたいという思いがあるので、とにかく学校に来てほしい。学校の先生方にその思いがあるのは、当然だろうと僕たちは思っています。

 僕は、先生のその思いは否定しないのですが、じゃあ今この子が願っていることはなんだろう、というところを考えるのが僕たちの仕事です。今、目の前にいるこの子は、学校へ行くのを渋っている。その状態について、よく「怠けている」という言葉を使うのですけど、はたからは怠けているように見えても、決してそうではありません。僕たちは必ずどこかにつまずいている部分があると考えています。そのつまずきの部分が何なのか分からないのに、行き渋る子どもをグイっと引っ張って行ったら、それは子どもたちからするとしんどいに違いないでしょう。

 なので、僕たちは「先生の思いは分かりました」と肯定しつつ、目の前の子どもたちが何を考えているのか、どんな気持ちでいるのか、そこから考えていくことを大事にします。子どもの立場で考えると、学校での安心・安全であったり、彼らの生活を保護していくことがいちばんなので、よりよい方向に向かうために、こういった考え方やアプローチもありますよと、先生方にお伝えするのが僕らの役目になります。