「絶対味覚」は、日々の食生活の中で少しずつ培われていく
―― クレープ生地がほのかに甘くて、これだけでもおいしいです。大葉が意外でしたが、かなり合いますね! チーズも入れて巻いてみたいと思いました。
田口 もちろん! チーズとも相性いいですよ。お子さんと一緒にお好きなものをくるくる巻いて作るのも楽しいと思います。忙しい中で、こうしておやつを一から手作りするのは、なかなか大変なことですが。ただ、手作りのおやつはちょっと手間がかかったり、クイックにできないからこそ、格別な「楽しさ」や「おいしさ」が生まれるんだろうなって思いますけどね。
―― 忙しいと手っ取り早く買ってきたものでおなかを満たすことも多いですが、そんなときこそ「エイヤっ!」と新たなレシピに挑戦してみると、作っていくうちに不思議と元気になっていくというか。
田口 食べ物を作ると、力が湧いてきますでしょ? 何も特別なものじゃなくていいんですね。普通にある材料を組み合わせて作る。今回のクレープ巻きも、普段家にあるような材料ですが、そこにちょっとひと味、ひと工夫加えると、新しい一品が生まれます。仕事や家事の合間の、わずかな時間しかないかもしれませんが、ほんのちょっとでも日々の暮らしの中で生み出したり、創り出したりする時間は、人生を必ず豊かにしてくれると感じます。
―― 本当にそうですね。そこに、子どもも巻き込んじゃうといいかもしれないですね(笑)。
田口 そうなんですよ! 全部自分でやろうと思うから苦しくなるし、面倒になってしまう。子どもにも上手に頼るといいんじゃないかしら。失敗してもそれはそれで楽しい経験になるし。むしろ子どものほうが親よりも上手にできたりすることもあるから、侮れないですよ。
―― 「自分のほうがお母さんよりできる!」って自信にもなりますしね。
田口 そうそう。だから、ちょっとでもできることがあったら、「すごいね!」「お母さんよりも上手!」って褒めてあげてほしいです。あと、うちのお店のスタッフたちを見ていて思うのですが、「絶対音感」というものがあるように、「絶対味覚」というものも存在すると感じます。「味を見分ける確かな舌」というんでしょうか。それって、すぐに得られるものではなくて、日々の食生活の中で少しずつ培われていくものなんですね。今はいろんな食材や加工食品、調味料が溢れていますが、シンプルな材料でシンプルに作って食べるのが、一番味覚が養われやすいと感じます。