声の大きな元気な子イコール「いい子」の呪縛から脱しよう
わが子が人前でハキハキと発言できなかったときに、親はつい、「どうしてできないの?」「もっと堂々と!」と言ってしまいがちですね。でも、実はそのプレッシャーでますます声が小さくなってしまうこともあります。大人は勝手に「子どもは元気にしゃべるもの」と考えがちですが、「子どもらしい」話し方って、あるのでしょうか。逆に大人は皆、「大人らしい」話し方をしていますか? 大人だって明るくハッキリしゃべる人もいれば、ゆっくりやさしくしゃべる人もいます。それぞれ、個性なのです。私たちのKEE’S こどもコミュニケーションスクールでは、「子どもらしくハキハキしなさい」という表現はNGとしています。声の大きな元気な子イコール「いい子」とは考えていないからです。
人前で話すのが「怖い」「恥ずかしい」のは当たり前のこと
でも、発言の場では、ハキハキと発言することが必要です。「ハキハキ発言」するためには、もともとの性格やその子らしさを変える必要はありません。テクニックを学べばいいのです。「ハキハキ発言」ができない理由から、まずは説明しましょう。
人前でうまく話せない圧倒的な理由は「怖い」、「恥ずかしい」という気持ちがあるから。知らない大勢の人の前でしゃべることは、大人でも9割がたの人が怖くて恥ずかしいのです。これは動物として当たり前で、「怖い」と思うのは、本能的なことです。たくさんの人に見られているという状況は、敵がたくさんいるのと同じことと本能的には感じます。動物としての防衛本能が働いて「戦闘モード」になるんです。自分とは違う意見の人がいるかもしれない、その人に否定されて攻撃されるかもしれない、そういう気持ちが強くなります。友だちとなら、何人でも大きな声でわいわい話せるのに、知らない人だと話せない、または知っている人でも、大事な提案をしなくてはならないときに警戒モードになるのは当たり前のことです。
そして、もうひとつ子どもが発言するときに「怖い」と感じる理由は、言葉を発すること自体が評価の対象になると、子どもが知っているからです。言葉の内容はもちろんのこと、声の大きさや滑舌も含めて、うまくできないと周りから笑われたり、叱られたり、どうかするといじめられる原因になってしまうことを、子どもたちは知っているのです。親から「ダメ」と言われることが多い子どもほど、その傾向は顕著です。また、社会的に見ても、子どもが思いっきり声を出すことが少なくなっているという傾向もあります。だから、話すことを意識してしまうのですね。
人前で話すとき、緊張はしていてもいいんです。そのこと自体は問題のないことです。プロのアナウンサーだって、本番では緊張しています。それより「二次災害」の対策をしましょう。二次災害とは、緊張することによって、呼吸が浅くなることで声が小さくなる、トーンが下がる、言いたいことが言えなくなることです。台風が来るのは仕方ない、だったらその被害が最小限になるように備えておこう、というわけです。