夫婦は共に働き、共に育児や家事をする――。この意識は、ここ何年かで若い世代を中心に随分と普及したのではないでしょうか。なのに、子育て世代がモヤモヤを抱えたままなのは、取り巻くルールが旧時代のままだから? この連載では、親になったからと受け身にならず、前向きに自分の人生を切り開こうとしている人を紹介していきます。一人一人の小さな変革でも、社会を変えるうねりになるかもしれません。

 前回の記事に引き続き、外資系の洋酒輸入販売会社に勤める古垣里美さんを紹介します。子育てを通じて仕事に対する意識にも変化が生まれたという古垣さんは、自身のキャリアを「既婚者も独身も、誰もが働きやすいと思える会社づくりに役立てたい」と考えて異動を志願。希望する仕事に就くことができました。

今回のDUALなヒロイン

古垣里美(ふるがき・さとみ)さん。41歳。4歳と2歳の娘と夫との4人暮らし。2013年4月から2014年3月まで第1子の、2015年5月から2016年4月まで第2子の産休・育休を取得。

アメリカの大学を卒業後、約10年間ロサンゼルスでニュース取材のコーディネーターなどの仕事に従事。2009年、「シーバスリーガル」「ペリエ ジュエ」といった世界的な洋酒ブランドを数多く扱うペルノ・リカール・ジャパンに入社。シャンパンやワイン、スピリッツなどのマーケティングに携わる。2017年7月に人事・コーポレートコミュニケーション本部へ異動。S&R・コーポレートコミュニケーションマネージャーとして適正飲酒の啓蒙に関する活動や広報などを担当している。

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 子どもが生まれてから時間的にいろんな制約がある中で生活していますが、その分、仕事に情熱を注いで発散しようと決めています。ランチも以前はコンビニで買ってきたものを机で食べたりしていましたが、今は必ず外に出ることにしています。毎日わずか1時間ですが、好きなものをゆっくり食べたり、同僚とコミュニケーションを取れるのは貴重なリフレッシュになる。それに最近では夫が家にいるときに、月に一度あるかないかくらいですが、夜のお酒の席にも行けるようになりました。夫が不在がちだからこそ、家族で過ごす時間も大切にしています。たまの家族のお出かけは、公園ピクニックや背伸びせず気軽に行ける近所のファミレス。それで十分ハッピーです。

 うちのオフィスは仕事も頑張っているママが多いです。特にマーケティング部門の女性はほとんどがママ。最近は5歳の子どもがいる女性が、責任あるマーケティングマネジャーのポストで転職してきました。子育てを楽しむ男性社員も結構いるみたいですし、子育てしながら働くことに理解のある環境だと感じています。

今の自分の関心やこれまでのスキルを生かせる仕事は?

 今年の7月に、8年以上在籍したマーケティング部門から、人事・コーポレートコミュニケーション本部という部署に異動しました。肩書はS&R・コーポレートコミュニケーションマネージャー。4~5年前にできた割と新しいポジションで、前任の異動に伴って自ら手を挙げました

 S&R(サスティナビリティ&レスポンシビリティ)はいわゆるCSRで、対外的に適正な飲酒を啓蒙する活動や、地域のコミュニティーに対して課題解決のサポートなどをしています。この間は空き家をリノベーションしてコミュニティースペースにする文京区のプロジェクトに、東京の社員ほぼ全員が参加。建物の補修やペンキ塗りをしました。もう一つのコーポレートコミュニケーションは、対外的な企業広報と、社内のコミュニケーションを円滑にしていく活動です。

 子どもができてからは仕事がルーティンのデスクワーク中心になり、2人目の育休から復帰して1年が過ぎたころからこのままではいけないという思いが募っていました。それに加え、子育てをしたことで、ブランドマーケティングとはまた違う、部署にかかわらず組織として独身も既婚者も文化も異なるみんなが働きやすい会社ってどういうものだろうということにも関心を持つようになったんです。

 取材コーディネーターとして、現場で人とコミュニケーションしていく仕事を長くやってきた自分の経験やスキルを、会社全体に還元する仕事がしてみたいという思いもありました。