「保育園のお迎え」マストで働き方を変えられる

佐藤 女性だって週に1~2日ぐらいは計画的に残業したいし、出張もできないと困りますからね。それぐらいできないと企業から見ると「女性は使いにくい」と言われてしまいます。常に残業するのはダメですが、「一切残業しません」「一切出張しません」というのも現実的に厳しいですよね。

 では、なぜお迎えが大事なのか。出勤のついでに行ける送りとは異なり、定期的にお迎えに行くということは、定時に帰らなければならない。残業が当たり前の働き方を変えなくてはいけないからです。また、子どもが発熱したときに保育園に駆けつける役割も女性が担っていることが多いですが、半分ぐらいは男性も負担しないといけません。男性が保育園に迎えに行くと上司は「なんでおまえが行くんだ」となりがちですが、これも変えていかなきゃいけない。「夫婦で子育てする」というのはそういう意味だと、本来は企業がそこまで伝える必要があります。

実は大企業の男性社員の妻の多くは専業主婦

佐藤 なぜカップルで子育てすることが大事なのでしょう。企業から見ると、自社の女性社員が活躍するためには、そのパートナーに家事・育児に参加してもらわなければ困ります。自社の女性社員に家事・育児が偏ると、自社にだけ負荷がかかりますからね。そういえばある企業で、自社の女性社員対象の両立支援セミナーを「他社の夫も参加可」に変えたら、5割が夫婦で参加したそうです。こういう取り組みが広がっていくとよいですよね。

 ここからが肝心なのですが、では、共働きでない世帯はカップルで子育てしなくてよいのでしょうか。見落とされがちなポイントですが、最大の問題は、専業主婦を持つ男性社員なんです。大企業ほど、妻が専業主婦の世帯は多い。彼らは育休を取る必要性を感じていない。さらに言うと、働き方改革の必要性も感じていない。日本が働き方改革に取り組むうえで、大きな課題は、働き方改革を必要ないと思っている人がいることなんです。

 実は、専業主婦を持つ男性社員にこそ、子育てに参加してもらわなければ困るのです。子育てに参加した経験がないと、女性社員の悩みは理解できません。ただやはり、妻が専業主婦で夫が育休を取るという考えはなじまないようで、なかなか進みませんね。