「翌日に回せる仕事はどれか」自分で考えることが大事

佐藤 色々な企業で働き方改革を提案してきましたが、その一つとして「部署内の全員が週2日は定時で帰る」という試みを導入したという事例があります。その代わり、残業は減らさなくてもよい。定時で帰る日は自分で決める。それならやれるでしょう、と。これを2カ月ほどやってみた結果、全体の残業時間は減りました。

 まず、毎日誰かが定時に帰ってしまう。だから会議や打ち合わせは定時以降は設定できない。残業はしてもいいけど、他の人を巻き込んではいけないので、1人でできる仕事に限定するわけです。そして、定時に帰ると決めている日なのに、「このままだと仕事が終わらなそうだな」と思ったら、翌日に回せる仕事はどれか考える。この「自分で考えること」が大事なんです。普段は何も考えていないんですよ。育児中でお迎えがある女性は、優先順位を自分で考えて効率的に働いている。週2日定時退社することに意味があるのではなく、週2日定時退社を課すことによって、1週間の段取りを考えさせる。それが真の目的です。

メリハリつけて「残業するなら2時間以上」

佐藤 「残業は20時まで」などと決めている会社が多いですが、あれは「20時まで残業していい」というメッセージを出しているのと同じことです。そこまではOK、と認めてしまっているので、逆効果ですよね。みんな残業を総量で見がちですが、残業時間は総量だけで判断してはいけません。大事なのはメリハリです。

 例えば、月20時間の残業はどうなのか。単純に考えると、1日1時間の計算ですよね。私は1日1時間残業するぐらいなら、残業ゼロの日と2時間の日があるほうがいいと思います。1時間なんて残業はなくせるはずなんです。残業ゼロの日は少なくとも週2日は欲しい。だから「残業するなら2時間以上」と私は提案しています。それが働き方改革なんですよ。メリハリをつけることを覚えないと働き方は変わらない。今は総量規制になってしまっていますが、本来の目的は規制ではない。働き方改革です。残業がない職場でも働き方改革が必要と冒頭で言いましたが、それが理由です。今残業がなくても、自分の頭で時間を意識してメリハリをつけて働けているのか、みんなが問い直したほうがよいということです。

働き方改革は生活改革とセットでやるべき

佐藤 もう一つ大事な点は、週2日定時退社させると、会社を出た後にやることがないという人が出てくる。実際にそういう取り組みをした事例では、そういう人たちに2カ月間、退社後に予定を入れさせました。飲み会でも何でもいいからとにかく予定を入れろと。

 つまり、働き方改革は生活改革とセットでやるべきなんです。生活を大事にしようという気持ちがあれば、早く帰ろうと思える。その「生活」がない人もいるから、生活改革をする。働き方改革で生じた時間を社員にどう使ってもらうのか。既に先進的企業では始めていますよ。ある企業では夕方になると「今日は◯◯でこういうイベントがあります」といったメールを社員に流しています。その内容は仕事に直結していても、していなくても正直どちらでもいいんですよね。

 難しいのは「お節介」にならないようにすること。企業が「勉強しろ」「子育てしろ」などと社員に直接言うのはお節介ですよね。企業ができることは、「これからうちが求める社員はどういう人か」というメッセージを出し続けることしかない。「仕事ができるのは当たり前。でも、仕事しかできないのはだめ」というメッセージをね。そこから先は本人に選択してもらう。