先生1人がしゃべっていて、聞いているのは3~4人。あとの子たちは寝る、トランプで遊ぶ、マンガを読む、ヘッドホンで音楽を聞いている、教室の後ろでボール遊びをしている……。わが子のクラスがこんな状況になったら、どうすればいいのでしょうか?

 いまや全国のどこでも、どんな学級でも起こり得る問題になっている学級崩壊。今回は、学級崩壊の実態やなぜ学級崩壊が起こるのか、学級崩壊の現場について、白梅学園大学子ども学部子ども学科教授の増田修治先生に話を聞きました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1)高学年女子の6割「付き合った経験がある」の真相
(2)小中学生の性交渉が増加中、小学生時代から教育を
(3)立ち歩き、暴言暴力 小学校の学級崩壊はなぜ起こる ←今回はココ!
(4)学級崩壊の防止や改善のために、親ができること

各小学校の1~2クラスは学級崩壊している

 いま全国的に問題になっている学級崩壊。様々な学校を回り、学級崩壊の立て直しに奔走してきた増田先生によると、学級崩壊は増加しているといいます。

 「埼玉県教育委員会が行った『「学級がうまく機能しない状況」に関する調査』によると、およそ7%の学校で学級崩壊が発生しています。また、発生学級率は5%ですから、計算をすると、20学級に1学級、つまり、3クラス編成の学校の場合、だいだい1校につき1学級という割合になります」

増田修治(ますだ・しゅうじ) 1958年生まれ。埼玉大学教育学部を卒業後、28年間の小学校教員生活を経て、白梅学園大学子ども学部子ども学科教授に。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」やNHK「あさイチ」などの情報番組に出演するほか、ニュース番組のコメンテーターとしても活躍。『「いじめ・自殺事件」の深層を考える』(本の泉社)、『先生!今日の授業 楽しかった!―多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点―』(日本標準)など、著書多数。
増田修治(ますだ・しゅうじ) 1958年生まれ。埼玉大学教育学部を卒業後、28年間の小学校教員生活を経て、白梅学園大学子ども学部子ども学科教授に。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」やNHK「あさイチ」などの情報番組に出演するほか、ニュース番組のコメンテーターとしても活躍。『「いじめ・自殺事件」の深層を考える』(本の泉社)、『先生!今日の授業 楽しかった!―多忙感を吹き飛ばす、マネジメントの視点―』(日本標準)など、著書多数。

 学級崩壊とは、「学級が集団教育の機能を果たせなくなってしまう状態」のこと。調査における「学級がうまく機能しない状況」とは、授業を受けていない、教師の指示を聞かない、立ち歩き、教室からいなくなる、など細かい規定があり、その割合で判断されています。

 「いま、子どもたちが荒れている状態で、学級崩壊は、公立・私立問わずに発生しています。実感としてはもっと多く、各小学校2クラス程度が学級崩壊していると思われます。都内の公立小学校で、どの学年、どのクラスも荒れている例があります

 DUAL編集部でも読者にアンケートを実施しました。そこでも「子どものクラスが学級崩壊になったことがある」と回答した人が44%もいました。学級崩壊になった学年では「3年生」が30.9%と最多だったものの、「5年生」(27.2%)、「2年生」「4年生」(いずれも24.7%)、6年生(21%)、1年生(18.5%)と、すべての学年で同じように起こり得ることが分かりました。

  どんな状態が学級崩壊だと感じましたか、という質問には、「授業中におしゃべりや立ち歩きが収まらない。勝手に外に出ていく子もいた」「児童が授業中に立ち歩き、授業にならない」「授業中に騒ぐ子、勝手にトイレに行く子、先生を言葉で攻撃し揚げ足を取る集団(がいる)」という、いわゆる「おしゃべり・立ち歩き」が多かった一方、「日常的に暴言暴力が横行している」「毎日、授業中に小競り合いが発生し、口げんかになり、つかみ合いのけんかが始まる。ついに流血騒ぎになり救急車を呼ぶ羽目になった」「女子に暴力を振るう男子がいる」「真面目に授業を受けたい子に暴力を振るう」という暴言・暴力系、また「先生がコントロールできない状況となった」「先生が休職した」と、先生側の困難をうかがわせる内容も目立ちました。

甘えたい子どもが多い低学年。暴力行為も激増

 学年によって、学級崩壊の状況は変わるのでしょうか? 増田先生は次のように話します。

 「低学年の場合は、授業中に立ち歩いたり、先生にかまってほしくて授業妨害したりと、未熟さゆえの勝手な言動が連鎖的に広がり、学級崩壊していきます」

 「とくに特徴的なのは、甘えたい子が多いこと。子どもをきちんと受け止めてくれない親が以前より多くなっているため、子どもがものすごく愛情不足を感じているケースが多くなっています。例えば、私が小学校へ行ったときに誰か1人を抱っこしてあげると、みんなが抱っこして、と集まってくるんです。1人をかわいがると、みんなをかわいがらなければいけない状況です」

 さらに、低学年に暴力行為が急速に広がっているといいます。

 「文部科学省の平成27年度『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』によると、平成17年度と27年度を比較し、小学1年生は8.9倍、小学2年生は7.6倍問題行動が増えています

 「妊娠している先生が授業中に子どもに注意をしました。先生が教室を出たときに、注意をされた子どもが後ろから先生を飛び蹴り。先生は前のめりで倒れておなかを打ち、救急車で運ばれました。小学校1年生のクラスの出来事です」

 そこには、子どもの語彙力の低下も影響しているのだとか。

 「読み聞かせをしていない、子どもとの会話が少ないと圧倒的に語彙力の差が出ます。言葉で自分の気持ちを伝えるトレーニングが不足しているため、自分の感情を口で説明することができず、相手をたたいたり蹴ったりなど、暴力を振るってしまうのです

<次のページからの内容>
・ 運動会の後に子どもが荒れる
・ 学級崩壊しやすいクラス・学校の特徴
・ 「周りの人は決まりを守っていないから、自分も守る必要はない」
・ 学力低下で「10歳の壁」を乗りこえられない
・ 授業についていくのが困難な生徒が約2割