管理職の「次の一歩」 踏み込んだ研修のニーズ高まる

山口 同じ会社の中でも、職場ごとにみんな状況が違います。企画やIT系など、モバイルでも仕事がしやすい部署はテレワークを入れるなどの策を講じられますが、例えば誰かが夜間にその場にいなくてはいけない職場では、時短の人が「一律夜勤免除」となれば、周りの人にしわ寄せが行き「時短の人がいると困る」という結論になってしまう。負担しない時短社員と、負担している通常勤務の社員との間に溝ができてしまうリスクがあるのです。そうした状況に課長は打つ手がありません。皆さん、具体的な対策を必要としています。

 ロールプレイングは管理職研修でよく使う手法ですが、これまでの研修では、例えば上司と育児中の部下の認識のギャップを埋めるためのコミュニケーションの取り方に関するロールプレイングが中心で、「時短の人ができない仕事は誰が担当するのか」という具体的な対応策まではカバーしていません。私は、そこを埋めるためにはケーススタディーの手法が有効なのではないかと考え、ケースを通じて解決策を考える管理職向け研修を今年から提供し始めました。

 一番よく使われるケースは、部下は女性ばかりで管理職は男性という設定のもの。通常勤務の女性社員が、時短社員が退社したあと残った仕事をするために残業しているという現状について、課長にクレームを付けるという展開です。男性課長が時短社員に事情を聞くと、「私たちは早く帰る代わりに、朝早く出社するなど努力している。私たちは会社のお荷物なのでしょうか」と言われてしまう。こんな板挟みにあっている課長はいったいどうすればいいのか、という内容です。

 そのケースでは、社員間の対立をどうするかだけでなく、仕事の分担方法についての具体策まで話し合います。グループでディスカッションするので、それぞれの管理職が過去に経験したことを持ち寄り、様々な角度から実現可能なアクションにまで落とし込んでいくことが可能です。

 この結果、出てくる結論は、企業によって違います。普段から働き方や業務改善について社員が深く考えている企業では、良いアイデアがどんどん出ることもありますし、日常的な取り組みが弱い企業では、運営側がヒントを出しながら誘導していかないと、現実的な対策にたどり着きません。こうした研修を通じて、企業による働き方改革の浸透度の差を感じます。

―― ありがとうございました。後編では「ダイバーシティー」などについて伺います。

* 後編へ続きます。

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(取材・文/小林浩子、撮影/鈴木愛子、イメージ画像/iStock)