職場復帰セミナーの男女混合化が進んでいる

―― 山口さんは「育休後コンサルタント」として、様々な企業で研修を実施されていますが、今年のトレンドのようなものは他にありますか。

山口 そうですね。育休中、または育休後に職場復帰した社員(ほぼ女性)に対して、仕事と育児の両立の心構えを伝える職場復帰セミナーは、5年ほど前から実施する企業が出てきて、各社とも毎年継続しています。また、3年ほど前からは、育休中の社員が夫婦で参加するタイプのセミナーが増え始めました。ここへ来て、当初本人だけ(ほぼ女性)を対象にしていた企業の中で、男性社員を同席させたいというケースが出てきています。最近のトレンドといえますね。

 例えば、分かりやすいケースは社内結婚の場合。仕事と育児の両立は夫婦で取り組むべきことなので、2人そろって出席してもらう。あるいは、男性が自社社員で、妻が他社勤務の場合。他社で働いている妻が復帰したばかりなので、どのように妻をサポートし、共働き世帯としてどうやって両立すればよいかを知るために、男性社員もセミナーに参加できる。男性社員にとっては、育児との両立を「自分事」として捉えるいい機会になりますね。

 育児をしながら仕事を続けるには夫婦のパートナーシップがとても大切で、私の研修でもそのテーマにかなり時間をかけます。女性だけが対象のセミナーでは、夫をどう巻き込むか、という話をしますが、男性が参加すればその部分を直接聞いてもらえるわけで、家で話し合う手間も省けて、とても効果的です。また、育児や家事参加に抵抗がある男性も、セミナーなどで講師に言われると、パートナーに言われるより受け入れやすいようですね。

パパが働き方改革の先駆者になれるメリット

山口 実はこの試みは、企業にとっても、メリットがとても大きいんです。小さな子どもを持つ男性社員が、保育園にお迎えに行くために、残業しないで効率的に働けば、社内の働き方改革の先駆者になってもらえる。今までは、ママだけが働き方を改革して効率を上げてきたのですが、男性でもそういう人が増えれば、職場の意識改革は進みますよ。企業はそれを期待しています。セミナーの男女混合化が広がっているので、私も研修のコンテンツに、年々男女共通の内容を増やすようにしています。

―― 管理職についてはいかがでしょうか。

山口 「次の一歩が必要だ」という問題意識を抱えている企業が多いですね。多様な働き方を実現するために「理想のボス像」は理解できたし、イクボス宣言もした。しかし、「実際には何をすればよいの?」という段階で立ち止まっている企業が多い印象です。

 「その仕事をどうするか」という具体策のニーズが高まっているのです。例えば、女性が多い部署で、育休や産休、時短を取る人が多い。仕事の量が変わらないとすれば、そんな職場でどうやって仕事を回せばよいのか。イクボス宣言しただけでは明確な策を見つけられません。本来は会社が主導して、部門ごと、職種ごとに改革すべきですが、そこまでの段階に来ていない企業も多いですね。