男性社員が「育休を取りたい」と言える空気が出てきた

山口 ただ、取り組みが進んでいるとはいえ、本社の人事部だけが頑張っていて、末端の管理職を巻き込めていないという企業もあるようです。最近、「男性社員の場合、その配偶者の妊娠を把握するのが難しく、本社の人事部で把握できたときには既に産後から2カ月ぐらい経ってしまっている。どうやったら全国の支社にいる男性育休の取得候補者を早く把握することができるか」という人事の方からの質問を耳にしました。その企業は男性育休の取得率が既にかなり高いのですが、男性は出産から8週間以内に育休を取得すれば、もう1度育休を取れるので、そのメリットを活かすためにできるだけ早い時期に周知徹底したい、という趣旨でした。

 でもその問題は、管理職が部下のことを普段からよく把握してれば解決することです。「お子さんができたのですね、おめでとう。出産予定日は? 育休はいつ取りたい?」と管理職が出産前から話せればいい。本社から全管理職に対して「子どもができたら早めに報告してもらえるような、男性部下との日ごろのコミュニケーションをお願いします」と言うべきなのです。本社は達成数値を決めて頑張って取り組んでいるけれど、まだまだ現場の管理職まで届いてないという例ですね。

 男性育休に関しては、積極的に社内で知らせる努力が必要でしょう。まだ制度自体が社内で知られてないこともありますから。新入社員や入社したばかりの中途社員に対しては社内制度を周知徹底しやすいですが、会社に何年もいる社員には制度について詳しく説明する機会がないというケースも多々あります。

 一方、上から特に働きかけていないのに、取得率が上がっている企業もあります。これまでにも、「育休を取りたい」という男性が全体の3割ほどいると言われていますが、「取りたかったけど取れなかった」男性社員が「取りたい」と言える空気が少しずつ醸成されてきたのではないでしょうか。また、妻から「あなたも取れるはずよ」と言われて知り、育休取得を希望する場合もあるようです。ニュースや当事者のブログなどでも、男性育休の話題を目にする機会が断然増えた気がします。

画像はイメージです。
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