この10年で患者数は増えている

―― メニエール病は増えているのでしょうか。

 「この5~10年で非常に増えていると感じます。患者さんは全国でおよそ5万人いるといわれます。データを見ると男女が半々ですが、都市部では特に40代の女性が多いです。この病院には月に30~40人の患者さんが来ます。環境が変わるなどして治ってしまう人もいます。仕事のストレスであったなら、退職や転職をしたら治ってしまうといった具合です」

 「症状を感じやすいときは、生理や更年期のイライラに加えて、天候のどんより感も影響するようです。気圧のせいなのか、気分のせいなのかは分かっていませんが、耳詰まり感を感じます。飛行機やエレベーターで気圧がかかると、耳が詰まる感じと同じです。女性の40代から50代は更年期でもありますし、育児中で介護が入ってくる世代です。共働きも増え、仕事のストレスが避けられません」

 「学校の先生も多いです。保護者や生徒に気を使い、ストレスが大きいのではないでしょうか。メニエール病にかかる人は真面目で、遊びができないタイプの人が多いです。診察室に入ってくるとき、眉間にしわが寄っていて、几帳面で資料を持参したり、自分の病歴や症状を細かく書いてきたりの人が見受けられます。色々な病院を回って、薬が効かないと言ってくる患者さんもいますね」

―― 治療はどうしたらいいのですか。

 「治療法としては、イソバイドというメニエール病の薬、漢方、気質や環境の改善の3つが柱です。よほど重い症状でなければ、改善しやすい病気です。イソバイドは内耳の水ぶくれを直す薬で利尿作用があります。漢方も効果があります。重度の場合は、ステロイドを使います。でも、薬と同じぐらい考え方や環境の改善も大事だと思います。私はまず、生活に遊びを取り入れ、ポジティブになるように勧めます。こうした改善のアドバイスは、形のない処方箋のようなもので、医師と患者さんとの信頼関係が影響します」

 「生活している中で、ストレスはなくせないもの。ストレスを感じてもいいから、数分でも忘れる時間を作ってください。患者さんには『うれしい、楽しい、ドキドキすることを見つけて、うっぷんを忘れる時間を持ちましょう』と伝えます

 「一つのやり方として、目まいや難聴などの発作を起こさせる原因を記録してもらいます。発作が起きない、調子がいいときの環境も把握したほうがいいですね。ネガティブな日記はつけないようにしましょう。有酸素運動も、ストレス発散にはいいので、一駅ぶん早歩きしてみてくださいと勧めます」