実はそれも“マタハラ”!? タイプ別事例
「いいよね〜妊婦だからって楽な仕事ばかりして。やる気があるのかしら」
「子育てがあるんだから、妊娠を機に辞めたらどうだ?」
そんな一言が、妊娠で体調不良や思うように動けない中でも仕事に懸命に取り組む女性には、鋭く心に刺さることがある。相手は軽い気持ちで言っていても、既にこれはマタハラの“イエローカード”だ。
働く女性が妊娠・出産・育児などを理由に、精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、不当な扱いを受けたりすることを意味する“マタニティー・ハラスメント”。通称“マタハラ”。セクハラ、パワハラと並び、働く女性にまつわる悩みとして世間の認知も高まってきている。
しかし、現状はどうだろうか? まだまだマタハラとは何か、働く女性側も周囲や上司側も理解しきれてない部分が多いのではないだろうか。知らずに言われるがままに会社を辞めてしまったり、堕胎を迫られたり、という事例まで出ているという。自分の身を守り、そして気持ちよく仕事が続けられるように、改めてマタハラについて学んでおきたい。
「今年の1月に法律が改正になり、非正規社員でも産休や育休を取りやすくなりました。これでさらに多くの働く女性が産休や育休を取れるようになった反面、まだ実際にはきちんとその説明が雇用者にされていなかったり、『うちではこれまでも妊娠したら辞めてもらってる』と悪しき慣習を持ち出したりする会社も多くあるのが現状です。しかしながら、悪意があるとは限らず、上司が制度や対応方法を知らないだけということもよくあるのです。自分が法律や制度を知ることで、泣き寝入りや不要な対立をせずに身を守ることができる場合もあるので、まずは知ることから始めましょう。」
とマタハラに関する制度や実情などに詳しいマタハラNetのマタハラ防止コンサルタント、宮田祐子さん。安心して妊娠、出産、子育てしながら働き続けられる社会の実現に向けて活動している。宮田さんが挙げた法改正のポイントは下記の通り。
「法改正により、正社員じゃなくても育休が取りやすくなったことと同時に、事業主には、「就業規則の懲戒規定等」にマタハラ行為に関する項目を追記し、社員にも周知・啓発を行うことが義務付けられました。パワハラやセクハラと同様に、マタハラに該当する行為が認められた場合には、会社が厳正に対処(つまり懲戒処分の対象にもなり得る)するということを全従業員に知らせなければいけないことになっているのです」と宮田さん。
「懲戒処分の方法には様々なレベルがあり、どのような行為に対してどのレベルの懲戒処分を与えるかについては企業組織ごとにお考えがあるでしょう。私の知っている範囲ですが、女性活躍推進に力を入れている、ある上場企業では、法律施行後、マタハラを理由に管理職を降格したという事例がありました。会社の本気度が表れますね」
まずは、妊娠中の働きやすさを求めることや、産休・育休を取得することを恐れず、それを支えてくれる法律があることを知っておこう。