「保育園児のお受験は不利」という噂の真実

 名門幼稚園は昭和型の良妻賢母家庭を代表するような保守的な家庭を好み、働くママや保育園児は不利だという噂があります。小学校の名門校受験準備のために、保育園から幼稚園へ転園するという家庭も珍しくありません。実際のところはどうなのでしょうか?

 「幼稚園に通わせたほうが有利という話を信じて、3年保育のタイミングで保育園から近所の幼稚園に移した方も確かにいます。けれど、お受験時代に『あちらの幼稚園は働いているお母様のお子様はお取りにならないから』と噂されていた園でも、実際には送り迎えをご主人やおばあちゃま、ベビーシッターさんに手伝ってもらいながら、子どもを通わせている働くママが何人もいます。要は幼稚園受験で試されるのは、働いているか、いないかという属性ではなく、子どもにとっての良い成長環境を親がどのように整え、どのように子どもと向き合い、家族で支え合っているか、という家族力が問われます。保育園児だからといって、難関幼稚園に合格できないわけではありません」

子どもと一緒にいる時間を長く取るために、時短を活用

 幼稚園受験に対応した教室へ通うようになり、受験をする1年前の11月〜3月までは週1回。4月から曜日が増え、2週間に3〜4回。土日に行くときが増え、直前は週に2〜3回通っていたと岡本さんは言います。

 「保育園に朝から夕方まで毎日預けていて、シッターさんにお教室に送り迎えをお願いし、限られた時間の中でお受験を突破できる親子関係を容易に作れるかというと、そうは思いません。普段は自由にさせてくれ、一緒に遊んでくれる大好きなママが、時々『ちゃんと言うことを聞いてね』と言うときがあれば、子どもはそれなりに期待に応えようとするでしょう」

 岡本さんもお受験を本格的に考え始めてからは、仕事の勤務形態を一時的にフルタイムから時短勤務へと切り替えたそう。

 「平日もご飯、お風呂、寝かしつけ以外に遊びやふれあいの時間を多く取り、休日は極力、動物園に連れていったり、牧場に連れていったり、一緒にお料理をしたりと、家族で過ごすようにしました。子どもと一緒にいるときはたっぷり遊んで、スマホを見ることはやめ、SNSやメールチェックをする場合は子どもが寝た後にするようにしました。その結果かなり濃密に、全力で娘と過ごす時間ができて、以前にも増して娘にとって私の存在が大きくなったように感じます」

 「賛否両論あるでしょうが、お教室で出会った働くママの中には、子どもとの濃密な時間を作るために、逆算して下のお子さんを妊娠し、育休を利用しながらお受験対策をした方もいました。そこまではしなくても、幼稚園受験にチャレンジする場合は、夜のビジネスの会食や休日の仕事を減らすなど少しキャリアのペースを落とし、職場が許す限り多くの時間を子どもと過ごすために割くことが必要になってくると思います。でも逆転の発想で、貴重な幼少期を仕事に明け暮れて過ごすのではなく、受験という名の下で“子どもを優先する”という意識を持つことができて、これまでワーカホリック気味に働いてきた私にとっては貴重な経験になりました」