学歴よりも企業規模のほうが影響が大きい

 生涯賃金を規定する要素としては、性別や学歴に加えて、あと一つ大きなものがあります。企業規模、大企業か中小企業かです。厚労省の資料でもこの点が認識されており、企業規模別に集計表が分かれています。大企業(1000人以上)、中企業(100~999人)、小企業(10~99人)という分類です。

 同じやり方で、これら3群ごとに学歴別の生涯賃金を出してみました。表2は、計算の結果です。

 どの学歴グループでも、現役時の生涯賃金は大企業ほど高くなっています。同じ大卒男性でも、大企業勤務者の生涯賃金(2.923億円)は小企業の1.4倍です。

 むろん学歴差もありますが、「大卒/中卒」と「大企業/小企業」の倍率を比べると、微差ではありますが、後者のほうが高いようです。学歴か企業規模かと問うならば、後者の効果が大きいとみられます。

学歴? 実力? わが子の時代はどうなるか

 仕事に就くことを「就職」といいますが、日本ではそれよりも「就社」という言葉がふわさしい。ジョブ型雇用ではなく、メンバーシップ型雇用である日本の特性が出ているような気がします。労働者が自分のスキルを売りにして複数の会社を渡り歩く欧米では、こうはならないでしょうね。

 本記事で分かった注目の数字は、2.64億円(表1)。大卒男性の現役時代の生涯賃金です。私のような無精者は、逆立ちしてもこんな大金は稼げそうにありません。これは1961年生まれ世代男性の試算値です。世代を下って、われわれの世代(70年代生まれ)の試算もしたいのですが、私たちはまだ40年ほどしか生きていませんので、まだまだ待たないといけません。

 今の子どもたちが働き始める頃は、どうなっているか。大学進学率がますます上昇し、「大学を出ていなければ人にあらず」の時代になっているか、それとも、雇われ労働の減少により、学歴など関係ない「実力主義」の時代が到来しているか。後者の可能性も否定できないように思います