賃金は加齢とともに学歴格差が顕著になる

 厚労省の『賃金構造基本統計調査』には、標準労働者の所定内月収と年間賞与額が1歳刻みで出ています。そういう細かい統計は、1976年版の資料からとられているようです。観察のスタートは15歳ですが、この年に15歳であったのは、1961(昭和36)年生まれ世代です。よって、この世代の男性を観察対象としましょう。

 やり方は簡単です。1976年の15歳の年収、77年の16歳、78年の17歳……というように、当該世代の各年齢時の年収を合算するだけです。年収は、所定内月収を12倍した値に年間賞与額を足して推し量ります。

 ちなみに、本資料に載っている1歳刻みの月収・年間賞与額は、標準労働者のものです。学校卒業後直ちに就職し、調査時点も同じ会社に勤めている者です。雇用の流動化が進んでいる現在にあっては、必ずしも「標準」とはいえませんが、この世代が就職したのは、70年代後半から80年代初頭ですので、まあ標準とみてもよいでしょう。

 なお、厚労省の『賃金構造基本統計調査』は2016年版までしか出ていません。1961年世代の場合、55歳時点までしか追跡できませんが、それ以降の56~59歳までは、最新の2016年版に載っている数値を使います。よって、この部分は仮定値であることに留意ください。

 では、結果をみていただきましょう。計算のイメージを持っていただくため、各年齢時点の年収をもれなく掲げます。

 どの学歴群も、加齢とともに年収が高くなりますが、学歴差も大きくなります。25歳時をみると、中卒が269万円、高卒が279万円、大卒が290万円だったのが、55歳時では順に585万円、741万円、956万円と、中卒と大卒では370万円以上の開きが出ます。学歴社会ニッポンの可視的な表現です。

大卒男性の生涯賃金は2.64億円

 ここでの関心は現役期間の稼ぎの総決算ですが、右欄の年収累積をみるとそれが分かります。低学歴者のほうが早く働き始めるので、若い頃は「中卒>高卒>大卒」となっています。

大学生のみなさん、黄色マークをごらんなさい。あなた方が大学で勉強している間、中卒者は985万円(15~21歳)、高卒者は654万円(18~21歳)稼いでいるのですよ。みなさんは、こういう稼ぎ分を放棄して大学で学んでいるわけです。授業料とは別個に、こういう費用(機会費用)も払っていることになります。それを取り戻せるよう、しっかり勉強しましょうね。

 まあ現実には、スタートの遅れ分を大卒者は取り戻せるようです。青色マークを見れば分かりますが、37歳の時点で中卒と高卒を追い越し、その後ぐんぐん差をつけていきます

 定年直前の59歳時点の累積総額はどうなっているか。これが現役時の生涯賃金です。右欄の一番下をみると、中卒が1.92億円、高卒が2.20億円、大卒が2.64億円となっています。退職金を含みませんが、これが現役期間の稼ぎの総額と見積もられます。巷でよくいわれる額と近似しており、違和感はありません。高卒と大卒の段差が大きいですね。

 15~59歳までの稼ぎの累積変化をグラフにしておきましょう。図1のように、きれいな曲線になります。