皆さんこんにちは、治部れんげです。今回は、共働き夫婦が大きな選択を迫られる「配偶者の海外転勤」を取り上げます。夫の海外転勤に「同行した妻」の話を聞くことも多い中、今回は「転勤した本人=夫」の話を中心にお伝えします。彼は「妻に仕事を辞めてほしくなかった」と言います。

妻が仕事を辞めざるを得なかったのは、おかしい

 私がお話を聞いたのは、佐藤さん(仮名)。30代、専門職の男性です。同世代の妻との間に子どもが2人。家族4人で数カ月前から欧州のある都市に住んでいます。家族は現地の生活に慣れてきました。妻は子どもの学校送迎をしつつ、合間に語学学校に通い外国人の友達もできました。佐藤さん自身も仕事にやりがいを感じ、暮らしにも満足している一方、もやもやを抱えています。

 それは、

 「妻が仕事を辞めざるを得なかったのは、おかしいのではないか?」

ということでした。

 私は約3年前、仕事を通じて佐藤さんと知り合いました。そのころ「近く、僕が海外転勤になると思います。妻に仕事を辞めてほしくないのですが、妻の勤務先に理解がなくて……」と聞きました。当時、佐藤さんの妻は、地元の中規模企業で正社員として働いていました。

 私の周囲には留学や赴任で海外へ行く人が大勢います。多くの場合、夫の仕事や留学に妻が同行しており、彼女たちは会社を辞めたり、休業制度を使ったりします。また、数は多くありませんが、妻が海外転勤や留学をして、それに夫が同行する事例も聞きました。

 佐藤さんのお話は「海外転勤する夫」の視点であること、そして、夫が「妻に仕事を辞めてほしくない」と考え、辞めないで済む方法を自ら調べるなど行動しているところが特徴です。こういう男性がどのくらいいるか分かりませんが、私には佐藤さんの主張は筋が通っているように思えました。第一に妻のキャリアに対する配慮。第二に家計や経済に対する考え方です。

 妻のキャリアについて、佐藤さんはこう言います。

 「妻は、自分が育った街で地域貢献するという、希望通りの仕事をしている。結婚後も働き続けられるから、選んだ仕事です。妻の就職については、妻の両親も喜んでいる。私の都合で彼女の仕事を失わせるのは忍びなかった