聞く力を養うには? 子どもと会話を続ける質問力は?

―― 先生は放っておく代わりに、「聞く力が大事」だと説いています。

池上 聞く方法を変えると子どもが変わってくると思います。例えば、学校に指導に行くと、何もやらない子がいます。「どうした?」と聞くと、「うん」としか言わない。でも「うん」と言うということは、返事を返す意思があるので、ちょっと手掛かりがある。もう一度「どうしてやらないの?」と聞いてみると、「だって……」とか「疲れた」とか言うわけです。「そうか、疲れたんだ」「でもまだ何もしてないのにね」と言うと、「だって、昨日さ……」と話してくれるようになります。そして話を聞いた後で「そうか、それは大変だったね」というと、その子は立ち上がって走り始めたりします。

 それは、自分を認めてくれる人、自分の話を聞いてくれる人がそこにいるから。認められたと思うと、行動を始められるんですね。「やらない子」というのは、そのスポーツがあまり得意でなかったり、要領がうまくつかめないからやりたくない、ということが多いです。ちゃんと認めてあげて「大丈夫、心配ないよ」というような対応をしていくと、子どもは変わっていきますね。

―― きちんとした答えが返ってこない場合は、聞き方が不十分ということでしょうか。

池上 私の知り合いで、質問メンタルトレーニングというのをしている人がいて。その人のルールとして、「質問したときに『分からない』と言うことや、答えがないことを認める」というのがあるそうです。それは、私が今言ったのと同じですよね。「そう、分からないんだ。じゃあいいよ、次にいこう」としてあげる。

―― ついつい「どっちでもいいって言わないで、どっちかにしてよ!」などと言ってしまいがちですが(苦笑)。

池上 大人が答えを持ってしまうと、質問ではなくなってしまう。それは、大人が望む答えを言うようにしている誘導尋問ですよね。その答えを言うように囲い込んで、逃げられなくしてしまう。それはあまり良くないですね。