会社に拒否されたら労働局に駆け込もう

 2pでも触れたが、そもそも育児休業制度は法律で義務となっているため、会社に制度が存在しなくても取得することができる。しかし、そのことを知らずに、自ら“空気”を読み過ぎて、取得の希望を言い出せず泣き寝入りしている人も多いのではないだろうか。

 厚生労働省で男性の育児参画を推進する「イクメンプロジェクト」担当の吉永佳代さんは、「育児休業は、一定の条件を満たせば、誰でも取得できます。労働者は、事業主に申し出るだけで育休が取得でき、事業者側に拒否権はありません」と断言する。仮に、会社側に申し出を拒否された場合は、厚労省の出先機関である労働局が相談窓口となる。吉永さんが続ける。

 「もしも会社側に拒否されたら、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)に連絡し、相談してください。育休取得者に対する不利益な扱いや、ハラスメントについても法律違反です。その場合も、労働局に相談していただければ、事業主に対して指導することができます」

 労働局雇用環境・均等部(室)の連絡先は、都道府県ごとの労働局ホームページなどで確認できるほか、厚生労働省が発行する「育児・介護休業制度ガイドブック」の巻末にも一覧が掲載されている。

あなたがロールモデルに!

 アフラックの岡本さんは、男性の育休取得が進まない要因の一つに「ロールモデルがいない」という問題を指摘する。確かに、近くにロールモデルがいれば、育休に関する漠然とした不安や情報不足が解消され、育休取得への心理的ハードルはぐっと下がるに違いない。

 ただ、「ロールモデルがいないから取得しづらい」「取得しづらい空気だから、ロールモデルが生まれない」…というように、この二つはニワトリと卵の関係ともいえる。このままでは、「2020年までに、男性の育児休業取得率13%」という政府の掛け声もむなしく、膠着状態だ。しかし、もし、この記事の読者の中から、ロールモデルとなる人が現れたり、ロールモデルになろうとする男性の良き理解者、支援者となる人が1人、2人と現れたりすれば、現状を打破する貴重な一歩となるのではないか。

 子どもの誕生という人生の一大イベントにおいて、思い込みや空気に流されず、自分や家族にとって納得のいく選択ができる人が増えること――。それが、「3.16%という低水準からの脱却」が意味する、来たるべき将来の姿ではないだろうか。

 特集第1回では、男性の育休取得率3.16%という現状とその背景を見てきた。次回は、育児休業制度や育児給付金など休みとお金に関わる各種制度の詳細から「育休中のやることリスト」までご紹介する。

(取材・文/柳澤はるか、日経DUAL編集部 田中裕康 イメージカット/鈴木愛子)