育休取得は人材確保と能力向上につながる

 「男性の育休が取りづらい雰囲気」といわれる日本の職場だが、男性の育休取得率を上げることは、企業にとってもメリットがある。

 女性活躍を推進するアフラックでダイバーシティ推進部長を務める岡本文子さんは、「男性の育休取得率を上げることは、女性の離職率を抑え、人材の採用や企業のイメージアップにもつながる」と話す。さらに、男性社員にとっても、育休中の経験がスキルやマネジメント能力の向上など自身の成長につながると考えている。

 「育児を経験することで、仕事の段取り力や時間管理能力が向上しますし、働き方にメリハリが生まれます。そうすると、復職後の時間当たり生産性が上がるので、長期的目線で見ると職場全体の生産性が上がるんです。また、子育てを通して地域社会と関わり、職場以外の様々な人と関わることで、多様な人脈が形成され、視野も広がります。生活者目線を身に付けることが仕事に良いフィードバックをもたらすこともあります。育休の取得は、自分自身の組織的、社会的価値を高めることにつながるのです」

 家庭面でのメリットも大きい。妻の産後に男性が育休を取れば、産後で体力の落ちている妻を体力面・精神面からサポートすることができる。他にも、妻の復職時期に合わせて男性が育休を取れば、妻の復職準備(職場に打ち合わせに行く、美容院に行くなど)の時間をつくることもできる。

 男性が「育児の現実を知ることができる」という点も大きなポイントだ。育休で数週間から数カ月、育児の現場に身を置き続ければ、たまに育児を“手伝う”だけでは見えてこない育児の大変さも、それを担う妻の苦労も、身をもって体験することになる。すると、妻への気遣いも自然と増え、夫婦円満につながる。

 また、育休中にしっかり育児を経験することで、男性が育児に対して自信を持つことができるので、復帰後も夫婦で育児の分担がしやすい、育児の悩みや喜びを共有できる、といった長期的なメリットもある。

 「男性は産む性ではないからこそ、父親としての自覚を養う特別な期間が必要だと思います。妻と同様に世話役割をスタート地点から一緒に身につければ、仕事と子育てという戦場で戦友になれ、夫婦の絆もより強まると思いますよ」(塚越さん)