男性の育休取得を妨げる「職場の空気」

 男性の育休取得を妨げている、最大の原因は何なのか。厚労省の調査で、男性が「育休を取得しなかった理由」として最も多かった回答は、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」(26.6%)というもの。僅差で「会社で育児休業制度が整備されていなかった」(26%)が続いた。

 他にも「業務が繁忙」(21.2%)、「会社や職場の理解がなかった」(10.8%)、「昇級や昇格など、今後のキャリア形成に悪影響がありそうだと思った」(10.3%)といった理由が並ぶ。職場の“空気”が、男性の育休取得を妨げる、心理的にも現実的にも大きな障壁となっていることがうかがえる(「平成29年版少子化社会対策白書」)。

 しかし、詳しくは後述するが、育児休業は法律の定めにより、一定の要件を満たせばどんな企業に勤めていても取得できるもの。それは男性でも女性でも同じことで、「会社の制度の有無」も関係ない。したがって、本来なら「会社で育休制度が整備されていなかったために、育休が取れなかった」という事態は起こり得ないはずだ。従業員側も「会社に制度がないと取得できない」と思い込んでいたり、育休に関する情報が不足していたりすることも、取得を妨げる一因になっているのかもしれない。

 育児休業を取得しなかった理由(男性・正社員)

(出典:平成27年度 仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果(三菱UFJリサーチ&コンサルティング))

 職場の雰囲気、上司や周囲の無理解、本人の意識や情報不足。これらの要因に加えて、「妻の意識」も重要だと指摘するのは、自身も育休を取得した、東レ経営研究所の上席シニアコンサルタントでNPO法人ファザーリング・ジャパン理事の塚越学さんだ。塚越さんによれば、現状では、そもそも育休取得について夫婦間で話し合っておらず、妻が半ば自動的に1人で育休を取得するケースが多いのだという。

 「講演などで、ママたちに『妊娠が分かった後、“育休、どっちが取る?”と夫婦で話し合いましたか?』と尋ねると、『話し合った』と答えるママは20人に1人いるかどうか。つまり妻側も、『育休は私が取るもの』『夫の会社は育休を取れるわけがない』といった思い込みがあるんです。職場の無理解などはもちろん改善しなければいけない深刻な問題です。ただ同時に、『妻から夫への投げかけ』も、男性を後押しするうえでは大事なことだと思います」