遊びを通じて社会性と学びの土台をつくるプレスクール

 入学前の準備期間として就学前の1年間を教育的観点から保育に取り組むプレスクール。以前は任意参加であったが、2015年秋以降、義務となっている。プレスクールを併設する同園では、6歳児の9時~13時はプレスクールの時間。保育園の閉所時間は17時半だが、8時から16時の勤務が一般的なフィンランドでは、16時~17時に共働き親の迎え時間の多くが集中するそうだ。

読み聞かせを終えた絵本は表紙を目立つ位置に張り、言葉への興味を育む。「子どもたちは幼児期からたくさんの絵本に触れます。さらにゲーム・タブレットの普及もあり、身近な関心から小学校に入学前にはほとんどの子が簡単な文字や数字を覚えてしまいますね」
読み聞かせを終えた絵本は表紙を目立つ位置に張り、言葉への興味を育む。「子どもたちは幼児期からたくさんの絵本に触れます。さらにゲーム・タブレットの普及もあり、身近な関心から小学校に入学前にはほとんどの子が簡単な文字や数字を覚えてしまいますね」

 同園のプレスクールは1クラス15人で幼児教諭が担当。授業は国のコアカリキュラムに基づいて計画されるが特に教科はなく、多面的な子どもたちの学びと発達を促し、入学前の基礎をつくることを目的としている。

 「プレスクールでは小学校で学ぶための準備をしますが、数字やアルファベットの習得は机上で教えるという形ではなく、例えば、子どもの名前から『この子の名前で使うアルファベットはaとoだよ』というように身近なものから興味を深め、日常で文字を認識をする機会を持つことで学びの土台をつくります。子どもからするとゲームや遊びをしているのと同じ感覚で、各自の発達に応じた自己肯定意識と学びを強化できるのが特長です

と、にっこりほほ笑むマケラさん。プレスクールで行う特徴的な活動は、「針と糸を使って好きなキャラクターのぬいぐるみを手作りする」「自分で撮った写真をつなぎあわせてアニメーションを作る」など長期にわたる作品づくり。将来の学びの可能性を広げるため、机上の勉強だけでなく体験を重視する。

 「例えば作品を制作するときは、子どもたちは『どんなキャラクターを作りたいか』というモチーフから決めていきます。長期にわたって行う活動の効果は2つあり、1つはゴールに到達するためのプロセスを学ぶことができることと、もう1つは、多方面からの視点を加えることで先生からの一方的な知識ではなく、自ら考える力、学ぶ力を育めること。各クラスの学習計画を決めるときも、自分たちで何をするか会議をして決めるんです。子どもたちが参加し自分たちで決めることで、モチベーションが高まりますね」 

子どもたちが手作りしたぬいぐるみ作品
子どもたちが手作りしたぬいぐるみ作品

 タブレットを活用した取り組みにも注目。小学校以上の義務教育課程を対象にした新カリキュラムでは、デジタルソリューションを効果的に活用した学びの機会が推奨されている。ICT教育の機会は、今後未就学児層にもより広がっていく方針だ。

 「左右の手をバランスよく使った創作活動は従来通りとても大切です。それとともに、タブレットは写真を撮ったり、アニメーションや映画を制作するなど能動的に活用し、興味を引き出すために有効なツールとして教育現場で取り入れられています