「今の小学生の65%が、今はない職業に就くと言われています。そのような時代を生きる子どもたちに一番必要な力は『自分で考える力』。そのための第1条件として『大人が子どもと離れること』が必要です」

 ジェフユナイテッド市原・千葉の育成普及部コーチや京都サンガF.C.育成普及部部長を歴任し、これまで延べ50万人の子どもたちにサッカーを教えてきた池上正さん。新著『伸ばしたいなら離れなさい』(小学館)でも、「失敗してOK、大人は消えてOK、放っておきなさい」とひたすら説いています。そう考える根拠とは?どう子どもに接すればいいの? 池上さんにインタビューをしました。子どもがサッカーをしているママ・パパはもちろん、子育て全般において役立つ言葉が満載です。2回に分けてお届けします。

言われたことしかできず、すぐ先生の顔を見る子どもたち

―― 「大人は消える」「まずは離れなさい」とか「子どもを放っておきなさい」ということを、繰り返し説かれています。なぜ、このようなアドバイスをするに至ったのでしょうか。

池上正さん(以下、敬称略) 小学校に指導に行くことがとても多く、ここ8年間でも40万人の子どもたちを見てきました。15年ほど前からずっと感じてきたことなのですが、指導する側が「こうしなさい、ああしなさい」と指図することがとても多くて。子どもたちがそれに従うだけで、考えなくてよい状態になっている。

 ある幼稚園に行ったときに、先生が笛を吹くと2列に整列していた子どもたちが4列になる、という指導を、先生が「こんなことができるのはすごいでしょ」というように、私に見せてくれました。そこで子どもたちに「では、3列になってごらん」と言うと、できない。そして先生の顔を見るんです。

 子どもたちが自分で考えることがとても大事だと感じてきました。子どもたちに考えさせるためにはどうしたらいいのか。私は今、60歳ですが、私が小学生のころは、遊んでいるとき大人に何も教えてもらわなかったんです。子どもたち同士で遊んでいる中でルールができたり、できないことができるようになったりしていく。大きなお兄ちゃんたちが小川を飛び越えていくのを見て、自分もなんとかして川を越えようとする。川にはまったりもするんですが、はまっても平気か、と思えたりして、色々なことを覚えていきました。

 でも、今の子どもたちにはそういうことがほとんどない。大人に教えてもらわないとしたら、ちゃんとマニュアルがあって、それを見れば分かるようになっていたりします。今は大人が本当に近くにい過ぎるので、少し離れて、遠くから見てあげるだけで、子どもたちは変わっていくと思うんです。

子どもたちを指導する池上さん
子どもたちを指導する池上さん