言われたことしかできず、すぐ先生の顔を見る子どもたち
―― 「大人は消える」「まずは離れなさい」とか「子どもを放っておきなさい」ということを、繰り返し説かれています。なぜ、このようなアドバイスをするに至ったのでしょうか。
池上正さん(以下、敬称略) 小学校に指導に行くことがとても多く、ここ8年間でも40万人の子どもたちを見てきました。15年ほど前からずっと感じてきたことなのですが、指導する側が「こうしなさい、ああしなさい」と指図することがとても多くて。子どもたちがそれに従うだけで、考えなくてよい状態になっている。
ある幼稚園に行ったときに、先生が笛を吹くと2列に整列していた子どもたちが4列になる、という指導を、先生が「こんなことができるのはすごいでしょ」というように、私に見せてくれました。そこで子どもたちに「では、3列になってごらん」と言うと、できない。そして先生の顔を見るんです。
子どもたちが自分で考えることがとても大事だと感じてきました。子どもたちに考えさせるためにはどうしたらいいのか。私は今、60歳ですが、私が小学生のころは、遊んでいるとき大人に何も教えてもらわなかったんです。子どもたち同士で遊んでいる中でルールができたり、できないことができるようになったりしていく。大きなお兄ちゃんたちが小川を飛び越えていくのを見て、自分もなんとかして川を越えようとする。川にはまったりもするんですが、はまっても平気か、と思えたりして、色々なことを覚えていきました。
でも、今の子どもたちにはそういうことがほとんどない。大人に教えてもらわないとしたら、ちゃんとマニュアルがあって、それを見れば分かるようになっていたりします。今は大人が本当に近くにい過ぎるので、少し離れて、遠くから見てあげるだけで、子どもたちは変わっていくと思うんです。